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【コミカライズ】愛するつもりなぞないんでしょうから  作者: 真朱
第1章

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19. 隣国ご一行


『使節団』と称した隣国一行は、王太子と外務大臣、今回の和平のために尽力してきた面々で編成されており、思いのほか少人数での、ひっそりとした来訪だった。


隣国とは、ついこの間まで仲が良いとは言えない関係だったため、まだ隣国もこちらへの警戒感がぬぐい切れないのだろう。あまり目立ちたくないし、大勢に取り囲まれるのも正直なところ不安だと言う。

式典にしろ歓迎パーティーにしろ、大々的なものは遠慮したいとの申し入れが隣国側からあったこともあり、入国の式典は、ごく少人数で行われることになった。


『隣国の王太子が出した嫁の条件』という、両国の和睦にあたって障壁となり得た懸念を、『姫との婚約を揉めることなく白紙撤回したこと』により払拭したことになるラキルスは、『和平の功労者の一人』として扱われるらしい。


何事もなかった扱いにされるのも納得いかないような気がするが、これはこれでどうなのよと言いたくなるのは、ディアナだけだろうか。


ディアナはラキルスのパートナーとして式典会場に来てはいたが、この場では要人との挨拶も必要ないとのことなので、ただの拍手要員のつもりで末席から気楽に隣国一行を眺めることにした。


(隣国の王太子、何かお高く留まってそうでいけ好かないな)とか

(王太子の護衛、眼鏡と長めの前髪と、うつむき加減の姿勢で表情隠してるつもりなのかもしれないけど、怫然としたオーラ出まくりなんだけど…。個人の心境としては、この和睦に納得してないってことね)とか。


輪の外にいるのをいいことに、ディアナは好き勝手に分析して楽しんでいた。


更に、これはもう職業病なのだが、隣国一行の中での戦闘能力的な実力者も、さっくり見極めていた。


隣国王太子の周囲は、体術が得意な護衛で固めているようだ。

まあ、帯剣が認められるとも限らないし、この場合は丸腰でも戦える人の方が無難なのかもしれない。

護衛方針の良し悪しはディアナにはわからないが、護衛の実力について述べるなら、一様に『ほどほど』程度に思う。


この間まで不仲だった他国に、少人数で赴いて来ているというのに、『ほどほど』の戦力だけで来るなんて、随分と呑気なものだな、というのがディアナの感想である。


まだ腹の内を測りかねている相手の本陣に乗り込むのだ。

持ち得る最大の戦力で臨むのがセオリーってもんじゃないんだろうか。ディアナが好戦的すぎるだけだろうか。


和睦が成ったことによる来訪なんだから、『信用してますよ』ってアピールなのかもしれないけれども、それにしたって、王太子って王様の次くらいに大事な存在のはずなのに、いきなり危ないかもしれない橋を渡らせない方がいいんじゃないかとか、余計なお世話だろうけどディアナは思ってしまう。


まあディアナも、対・魔獣は手慣れたもんだが、対・人間は碌に経験がないし、正解なんてわからないのだから、そのへんのことをつべこべ言うのは止めておこう。


それよりも、ざっと見たところ、

隣国の中で実力的にまあまあと言えそうな人は、護衛ではなく、和平に尽力したという使節団の方にならいた。

軍人が和平に尽力することだってあるだろうから、うがった見方はするべきではないんだろうが、王子の護衛より戦える人がしれっと一般人枠に混じっているってだけで、何となく警戒したくなる。


しかも、真っ赤っ赤な髪色に、民族衣装らしき派手な服装という、特徴的な出で立ちをしており、無駄に目立つのも何やら気に障った。


いや、別に敵意や悪意を感じているわけではなく、むしろ和睦を喜んでいるんだろうなというウェルカムオーラを醸し出していて、王太子の護衛との違いがいっそのこと面白い。

赤髪に民族衣装の、一番の実力者たる使節団の一員の方のことは、親しみを込めて、心の中で勝手に『赤髪さん』と呼ぶことにしようと思う。


(戦える人間が一般人の顔して交じってるって意味では、わたしも同じか。下手に隣国側に警戒されても雰囲気悪くなりそうで嫌だし、わたしは大したことない人間を装っとこっかな…)


ディアナは、ただ単に夫であるラキルスが招かれたため、その妻として同行しているダケのことで、何の裏も思惑もない。紛れもなく、ない。


だが、相手がどう捉えるかは、また別のお話。

物音一つ立てずに行動するような女が、さりげな~く拍手要員としてそこに居たら、普通に考えて相当不気味なはずである。ディアナだったら最大級の警戒を払う。


なのでディアナは、自分にボコボコ隙を作っておいた。

失礼にならない程度に、足音や衣装の擦れる音を立ててみたり。

いつもなら全方向に向けている意識を前方のみに向けてみたり。

ちょっとした音にも驚いたような顔をしてみたり。


意外とやれる子ディアナは、気配を消せる一方で、適度に気配を醸し出すことだって、ちゃんとできるのだ。


とりあえず、王子の護衛も赤髪さんも、ディアナを警戒している様子は見られない。うまく誤魔化せている模様である。


この調子で『ただの嫁』を装う決意を固めたディアナは、能天気に微笑みつつ、使節団に拍手を送っていた。




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