表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
社畜剣聖、配信者になる 〜ブラックギルド会社員、うっかり会社用回線でS級モンスターを相手に無双するところを全国配信してしまう〜  作者: 熊乃げん骨
第四章 田中、デートするってよ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/235

第5話 田中、鱗を斬る

「よし。じゃあまずは星乃からやってみるか」


 気を取り直して俺は星乃にそう振る。

 星乃は俺の呼びかけに気合たっぷりに「はい!」と答えると、用意された武器の中からもっとも大きな剣を手に取る。


 彼女の普段使っている剣と大きさも形も近い。あれならいつもの力が出せるだろう。


"あんな大きな剣を軽々と持てるのすげえ"

"かわいい顔してパワーファイターだからね"

"蛙の子は蛙。戦闘民族の弟子は戦闘民族"

"鱗くん大丈夫?"

"鱗くん逃げてぇ!"

"サファイアドラゴンの鱗は硬いって有名だけど、どうなるかね"


 コメントも星乃が鱗を斬れるかどうかで盛り上がっている。配信したのは正解だったな。


 星乃は剣を上段に構えると、鱗の前で精神統一する。

 しばらく目を閉じていた彼女は、目を開くと「いきます」と小さく呟く。


「えーーーいっ!」


 足に溜めた力を腕に送り、思い切り腕を振るう。

 星乃は俺が前に教えたことをかなり高いレベルでこなしていた。どうやら別れてからも特訓を続けていたみたいだ。


 物凄い勢いで振り下ろされた剣は、鱗に当たりガァン!! と大きな音を鳴らす。星乃の腕力は凄まじく、建物がぐらぐらと揺れてしまう。


"おわっ!?"

"音がすごい!"

"鼓膜壊れたわ"

"力やばくて草"

"力の二号は健在か……"

"鱗くーーん!!"

"鱗死んだわ"

"鱗の人気に嫉妬する"


 天井からパラパラと落ちてくる埃を払い除けて、俺は鱗を確認する。

 星乃が力の限り斬りつけたその鱗は……傷ひとつ付かず、その場に立っていた。


「あ、あれ?」


 手応えがあったのか、星乃は不思議そうに首を傾げる。

 残念ながらチャレンジ失敗だな。


"鱗くん硬すぎて草"

"ええ……あれで駄目なの……?"

"鱗「効かねえ、竜だから」"

"まあサファイアドラゴンはSランクモンスターだからな。まだ分が悪いよ"

"鱗くんイケメン過ぎる。コミュ入ります"


 コメントが盛り上がる中「次は私が」と凛が前に出てくる。

 その手には用意されていた短剣が二本握られている。


 一方星乃は「だめでしたあ」とふにゃふにゃした顔でこちらにやってくる。


「惜しかったな。いい線いってたぞ」

「うう……ありがとうございます……」


 励ますと少しだけ元気を取り戻すけど、それでもやはり悔しそうだ。

 後でまた色々教えてやるとしよう。


 と、そんなことを思っていると、凛の準備が完了する。


「ふう……いきます」


 二振りの短剣を十字に構えた凛は、剣を交差させながら二本同時に振るう。

 速く、鋭い一撃だ。二本の短剣は鱗の同じ箇所に同時に命中し、キィン! と甲高い音と火花を立てながらその表面を小さく欠けさせる。


 うん、狙いが定まったいい攻撃だ。凛も腕を上げたな。


"はっっっや"

"マジで剣見えなかったわw"

"凛ちゃんもちゃんと強いんだな"

"戦闘民族は引かれ合うんだなって"

"討伐一課って戦闘エリート集団だぞ? 強くて当たり前だ"

"鱗くん……"

"鱗「ほらな、効かねえ」"

"効いてて草"

"でも切断まではいかなかったな"

"なに、まだシャチケンが控えてる。鱗くんの命運もそこまでだろ"


「……不甲斐ないところをお見せしてしまいました」


 凛は目を伏せ、無念そうな顔をしながら戻ってくる。


「そんなことないさ。凛もかなりいい線いってたぞ。強くなったな、俺は嬉しいぞ」

「先生……」


 俺は凛をそう慰めた後、鱗の前に行く。


「二人とも以前より格段に強くなってる、そこは本当だ。落ち込むことはない。そもそもサファイアドラゴンは鱗がある背中側じゃなくて、鱗のない腹部を攻撃するのが定石だ。これを斬れないからってサファイアドラゴンに勝てないわけじゃない」


 Sランクのモンスターでも完全無欠なモンスターはいない。たとえ正面から勝てなくても、弱点をつけばあっさり勝てたりする。まあもちろん正面から勝てる力があるに越したことはないけどな。


「二人に足りないのは『狙い』だ。これだけ硬いものを斬るとなると、闇雲に攻撃しても効果は薄い。鱗の弱い箇所を見抜くんだ。同じ部位でも、衝撃に弱い箇所と強い箇所があるのは分かるな?」

「はい、なんとなくは……」

「そうですね。まだ完全には見きれませんが」


 二人は頷く。過去の経験からなんとなくは理解しているみたいだ。


"分からんくて草"

"なんで分かるねん"

"すまん。戦闘民族語はさっぱりなんだ"

"鱗「こいつらなに言ってんだ……?」"

"そうだったとしてもどうやって見分けるんだよw"


 コメントに困惑するものが多く流れる。

 まあこれは感覚的なものだから難しいか。でもこの先Sランクのモンスターと戦うなら覚えておきたい技術だ。


「難しいかもしれないけど、それを見極められるようになるんだ。最初のうちは手で触ってみるといい。物には目に見えない細かい線……『』がある。それに沿って刃を入れれば、どんな物でも簡単に斬ることができる」


 俺は手で触りながら鱗の『目』を読み取る。

 全てのものには木に木目があるように、『目』があるんだ。そこに狙いをつけて……俺は手刀を放つ。


ここ(・・)


 放たれた俺の手刀は青く輝く鱗に命中すると、そのまま鱗をスパッと両断する。

 ゴトッ、と床に転がる鱗を見て、星乃と凛は目を大きく開けて驚く。


"はあああああ!?"

"武器使ってなくて草"

"凄い通り越してキモいわ"

"【悲報】シャチケンの手刀、剣より強い"

"鱗くんスパスパで草"

"鱗くーーーーん!!"

"鱗「わりぃ、おれ死んだ」"

"鱗くん……いい奴だったよ"

"これには二人もドン引きでしょ"

"いや、あの顔は惚れ直してる顔だゾ"

"戦闘民族は強い奴に惹かれるからね"

"鱗「俺も惚れた」"

"成仏してもろて"


 盛り上がるかと思って素手でやってみたら、想像以上に盛り上がった。

 狙い通りに行くと嬉しいな。


【読者の皆さまへ】


この小説を読んで


「面白い!」


「続きが気になる!」


と思われたら、↓の☆☆☆☆☆ボタンを★★★★★に変えて応援していただけますと嬉しいです!


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
鱗く〜ん(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
鱗君大人気で面白いw
明らかに海軍の英雄オマージュの堂島大臣といい今回の自分をゴム人間だと思い込んでる鱗くんといい、作者さん某海洋冒険ロマン好きすぎでは?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ