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社畜剣聖、配信者になる 〜ブラックギルド会社員、うっかり会社用回線でS級モンスターを相手に無双するところを全国配信してしまう〜  作者: 熊乃げん骨
第十九章 天月、休暇を取るってよ

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第1話 田中、休日を迎える

「休日だっ!!」


 朝起きた俺は、カーテンを開けて朝日を浴びながらそう口にする。

 窓を開けると涼しい風が髪を揺らす。いい天気だ、今日はお出かけ日和だな。


「りり?」

「ああ、おはようリリ。起こしちゃったか?」


 俺はリリ専用の小さなベッドで寝ていたリリをなでる。

 するとリリは「りり♪」と嬉しそうに声を出して俺の手に体をこすりつけてくる。可愛い奴だ。


 コラボカフェから数日経った。

 無事終了してもあれから片付けなどが色々あって、中々休みを取ることができなかったが、今日は久しぶりに完全な休日だ。


 足立からはカフェ期間中も休んでいいとは言われていたが、どうしても気になって毎日顔を出してしまった。まあそれでもこまめに休憩してたからそんなに疲れてはないんだけどな。


 カフェで一週間働くよりも黒犬ブラックドッグギルドで一日働く方が大変だ。あそこじゃマジで休憩時間すらマトモになかったからな。


「さて、せっかくの休日だ。明日も休みだしなにかするか。どこか出かけるのもいいな」


 そんなことを呟きながらリビングに行くと、そこには制服のままソファで倒れている天月の姿があった。その姿はボロボロで満身創痍といった様子だ。

 俺は驚き彼女に近づく。


「え!? お、おい天月、どうした!?」

「み、みず……」

「水だな!? ちょっと待ってろ!」


 急いで水を用意し、天月を座らせて水を飲ませる。

 そして彼女の部屋着を用意し、それに着替えさせる。すると天月も落ち着いたようでようやくまともに話せるようになる。


「ありがとう誠……落ち着いたわ」

「それは良かった。でもなんであんなところで倒れていたんだ?」

「たいした理由じゃないわ。昨日一昨日と休みなく働き詰めで、帰ってきた安心感で気絶しただけだから心配いらないわ」

「それのどこに心配いらない要素があるんだ!?」


 俺は思わず突っ込みを入れてしまうが、天月は「?」と俺の突っ込みがピンと来てないようで首を傾げている。

 おいおい、俺が言えた口じゃないがこれは重症だな……。


「天月。それは明らかに働きすぎ、過労だ。ちゃんと休まないとやばいことになるぞ」

「大丈夫、ちゃんと一日二時間は寝ているわ。シャワーも……三日に一回は浴びている」

「だからそれが大丈夫じゃないんだって!」


 駄目だ。完全に働きすぎて正常な思考じゃなくなっている。昔の俺を見ている気分だ。

 どうしたものかと困っていると、リビングに凛がやって来る。どうやら今起きたみたいだ。


「おはようございます先生。いい朝ですね……って、姉さん!?」

「あら凛、おはよう。あなたは仕事はいいの?」

「え……これって……」


 困惑する凛に、俺はなにが起きたのかを伝える。

 すると凛は「なるほど……」と納得する。


「姉さんが忙しいのは知っていましたが、まさかここまでとは思いませんでした。最近の業務データを確認してみましたが、どうやら規定以上の業務をこなしていたみたいです」

「やっぱりか……こんなになるまで働くなんて」


 過労と一口に言っても、その原因は大きく二種類に分けられる。


 一つは会社や上司にキャパ以上の仕事を振られること。

 俺のケースがそれにあたり、世の働きすぎている会社員たちもこれに該当するだろう。


 そしてもう一つが『自ら』キャパシティ以上の仕事をしてしまっている人。

 責任感が強かったり、そうしなければいけないなにかしらの理由があったり。これの理由は様々だが、自分で選んでブラック環境に身を置いている人もいる。


 そして天月がこのタイプだ。

 天月は人一倍責任感と正義感が強い。そういう人は面倒な仕事が増えると部下に振るのではなく、自分で解決しようとしてしまう傾向がある。


「なんとかしてやりたいが……どうしたもんか」


 もし俺みたいに無理やり働かせられているなら、上司を殴ればいい。

 しかし天月は望んで働いてしまっている。殴れる上司もいないということだ。


 これ以上働くなと言っても簡単には聞いてくれないだろう。

 討伐一課の仕事は国の治安に直結する。平和を愛する天月が手を抜けるはずがない。


「先生。ひとまず数日は姉さんが働かなくてもいいように調整してみます」

「それはありがたいが……できるのか?」


 俺が尋ねると凛は難しそうな顔をしながらも頷く。


「他の者をかき集めれば……なんとか。最近は怪我人が多く、人手が不足しているんです」


 ダンジョン関係の仕事は慢性的な人手不足だ。

 一攫千金のチャンスはあるが、一つのミスで命を落としかねないからな。


 怪我をして引退したりモンスターがトラウマになって戦えなくなる探索者も大勢いる。討伐一課の人たちの中にもそういった人はたくさんいるんだろう。

 どうしたものかと考えていると、リビングの扉がバン! と開いて誰かが入ってくる。


「話は聞かせてもらいました! 私が手伝います!」


 元気よくそう言ったのは星乃だった。

 寝起きみたいでアホ毛みたいに髪が跳ねていて可愛らしい。


「どういうことだ?」

「政府の仕事ってギルドも参加できるんですよね? 私もアルバイトではありますが白狼ホワイトウルフギルドの一員。凛ちゃんと一緒に政府の仕事を手伝えるはずです」

「それは……そうだが」


 政府の仕事を全て政府の人間で回せているわけではない。

 懇意にしているフリーランス。そして一部のギルドは政府の仕事の下請けをしている。政府の仕事は危険なものが多いが、その分実入りが良く、実績にもなる。


 俺が以前いた黒犬ブラックドッグギルドの社長須田も、ギルドの名を上げるために政府の仕事を積極的に受けていた。

 まあそれを実際にこなしていたのは、ほとんど俺なんだが。


「気持ちは嬉しいですが、関係ない唯を頼るのは……」

「関係なくないよ! 天月さんには私も良くしてもらってるし、力になりたいの!」


 星乃は遠慮する凛に詰め寄る。

 天月は最近星乃のことも妹のように可愛がっていて、時間があると二人で稽古していたりする。


 星乃も天月のことが心配なのは変わらないだろう。


「凛、星乃も力になりたいんだ。願いを聞いてくれないか?」

「……分かりました。唯の力は私も認めています。一課の人間にかけあってみます」

「ほんと!? ありがと凛ちゃん!」


 星乃は嬉しそうに凛に抱きつく。

 凛は慌てて恥ずかしそうにしているが、まんざらでもなさそうだ。


「そういうことなら俺も力になろう。なに、政府の仕事ならよくやっていたし問題ない。そうだ、鋼鉄の牡鹿(アイアンスタッグ)ギルドにも聞いてみたらどうだ? 三上なら喜んで力を貸してくれるだろ」


 我ながらいい案に思えた。

 鋼鉄の牡鹿(アイアンスタッグ)は新興のギルド。まだ政府の仕事を受けていないだろう。

 実力なら十分。実績にもなるし、きっと受けてくれるだろう。


「そうですね。鋼鉄の牡鹿(アイアンスタッグ)ギルドが手伝ってくれれば心強いですし、先生がいれば百……いえ、億人力です」


 凛はそう言うと俺たちを見て、頭を下げる。


「お願いします。姉さんのために力を貸してください」


 そう頼まれた俺と星乃は顔を見合わせると、頷き合って凜の方に視線を戻す。


「当たり前だ。俺でよければいくらでも使ってくれ。天月のためなら100時間残業でも喜んでやる」

「私も頑張るよっ! いくらでも頼ってね!」

「二人とも……ありがとうございます。頼りにさせてもらいますね」


 こうして俺たちは、天月のために政府の仕事をやることになった。

 久しぶりに激務の中に身を置くのも悪くない。頑張るとしよう。

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― 新着の感想 ―
100時間残業とか、ミイラ取りがミイラになるだろw
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