第3話 田中、開店する
「みなさんこんにちは、田中誠です。今日も配信に来ていただきありがとうございます」
俺はいつも通りドローンを起動し、配信を始める。
すると視聴者数がどかっと増えて、コメントが爆速で流れ始める。
今日は配信をすると告知していたこと、そしていつもとは毛色が違う配信をすると伝えていたこともあってか、いつもより視聴者の数もコメントの数も凄まじかった。
"うおおおおおおお!"
"来たか"
"待ってたぞ田中ァ!"
"生きがい"
"今並んでますw"
"同じく"
"現地民羨ましすぎる"
"ほんまそれ"
「えー。本日より開催する『シャチケン海の家コラボカフェ』ですが、ありがたいことにたくさんのご応募をいただきました。初日のチケットに当選した方が現在たくさん並ばれています」
さっき外の様子をチラッと見てきたが、開店前から長蛇の列ができていた。
これで抽選制だというのだから驚きだ。初日のチケットは応募が凄まじすぎて倍率が10000倍を超えたらしい。どんだけ応募あったんだ。結構受け入れられるようにしたのに。
「これから順次中に案内し、食事していただきます。その様子を一日通して配信する予定ですので、運悪く店に来られなかった人もよろしければ配信を見てください」
"はーい"
"了解です!"
"りょ"
"現地行きたかったんご"
"くそー"
"まあまだ抽選の機会あるから"
"明日のチケットが当たってるワイ。高みの見物"
"うらやま死刑"
"殺してでも うばいとる"
"物騒で草"
本当なら来たい人全員入れてあげたいが、キャパシティにも限度がある。
まあ好評だったら第二回を開催できる。たくさん売り上げて次もできるようにするとしよう。
「それではコラボカフェをオープンします! 来店された方はぜひ楽しんでいってください!」
俺の合図で開場し、多くのお客さんがなだれこんでくる。
さあ、業務の時間だ。
◇ ◇ ◇
「ご注文はなんでしょうか?」
「はい、えーと……ってゆいちゃん!? え、ゆいちゃんが接客してくれるの!?」
「はい♪ お任せください!」
そう言って星乃唯はぽんと自身の胸を叩く。
運良く彼女に接客してもらえた女性の客は感動して一緒に来ている友人ときゃあきゃあ騒ぐ。
シャチケン海の家コラボカフェは大きく二つのスペースに分けられている。
海と砂浜を一望できるテラス席がある『海の家エリア』。そして喫茶店の室内が再現された『喫茶店エリア』。二つのエリアが合体した建物がこのコラボカフェの会場であった。
星乃は現在海の家エリアを担当しており、その服装も海の家仕様となっている。
この前着た水着の上にTシャツを着て、腰の部分を結んで短くしている。髪にはひまわりの形をしたヘアピンをしており、非常に夏らしい格好をしていた。
「あの、ゆいちゃんと写真って撮って大丈夫ですか?」
「はい! 一組一枚までって決まりはありますが、大丈夫ですよ! いっしょに撮りましょう!」
星乃はそう言うと彼女らと一緒に写真を撮る。
普段はモニター越しにしか会えない星乃と触れ合えて、彼女らはテンション高く喜ぶ。
「ファンサえぐすぎ! 一生推す……♡」
「え、えっと。ありがとうございます」
湿度の高いファンを前にたじろぐ星乃。
ファンと関わる機会は少なかったので、こういったことにはまだ不慣れな星乃であったが、回数を重ねる内に少しずつ慣れてきていた。
ちなみに迷惑行為をした場合田中が直々にしばくと告知していたので、今のところ迷惑客は現れていなかった。彼の強さを配信でよく見ている彼らの中に、田中のしばきを受けたいと思う命知らずはいなかった。
"ゆいちゃんの接客裏山すぎる"
"いいなあ"
"ゆいちゃんの格好可愛すぎない? スクショ止まらないんだけど"
"ほんまそれ"
"会場限定アクスタだけでもいいから欲しい"
"りりたそのぬいぐるみだけでもなんとか買いたい"
"後日通販もやるって告知あったしそっち頑張るしかない"
"俺の財布が火を吹くぜ"
会場の様子を見ている視聴者たちが思い思いのコメントを書く。
コラボカフェにはいくつかのドローンが巡回し中の様子を配信している。彼らはそれを見て中の雰囲気を少しでも味わおうとしていた。
メニューを頼むことはできないが、働いている田中たちが現れる度にコメントの流れは加速している。
「ゆいちゃん。じゃあこの『海の家焼きそば(田中特製ソース使用)』をお願いしていい? あと『星乃のキラキラソーダ』もお願い!」
「はい! 私のメニューを頼んでくれてありがとうございます! すぐ持ってきますね!」
星乃はそういうととてとて歩いて去っていく。
店員は彼女だけではなく鋼鉄の牡鹿ギルドのメンバーや、足立が連れてきた探索者などもいる。彼らも無名というわけではないのだが、やはり星乃より人気があるわけではない。
他の客たちは星乃に接客された彼女を羨ましそうに見ていた。




