第2話 田中、仲裁する
「三上、コラボカフェの経験があるって聞いたがどういうことをやったんだ?」
机に突っ伏している三上に尋ねると、三上はバッと勢いよく立ち上がり、眼鏡をスチャッと直して話し始める。いちいち行動がうるさい奴だ。
「鋼鉄の牡鹿ギルドでは定期的にコラボカフェを開いているんです。その時は僕たち社員もカフェに持ち回りで顔を出し、ファンと交流します。いわばファン交流イベントですね。僕たちは配信者ではありませんが、人気がありますので」
「へえ、そうだったのか」
そういうことをしていたとは全く知らなかった。
みんな色々頑張ってるんだな。
「ですのでコラボカフェ経験者かつ田中さんのファンかつ弟子である僕が助っ人として参戦したというわけです。安心してください田中さん、この僕が参加したからにはこのコラボカフェは99.999%成功するでしょう!」
「……そうか」
自信満々な三上を見ていると不安になるのはなぜだろう。
失敗フラグがビンビン立っている。
まあでも今回はカフェを開くだけ。変なことにはならないかと思っていると、
「待ていぃ! 兄貴の弟子を名乗るとはふてえ野郎だ!」
突然扉が開き、事務所の中に一人の人物が入ってくる。
入って来たのはディープワンのダゴ助であった。どうやら隣で話を聞いていたみたいだ。
「なんだ急に。僕になにか用か?」
「ああ、用が大アリだ! いいか、兄貴は俺の兄貴なんだよ。てめえみたいな坊ちゃんが兄貴を師匠と呼ぶなんざ1000年早え!」
ダゴ助は謎の論を主張する。
そもそも俺はお前の兄貴分にもなったつもりはないんだが。なにを意味の分からないことを主張しているんだ。
一方絡まれた三上はその言葉にカチンと来たみたいで、ダゴ助に負けず劣らず謎の主張を展開し始める。
「言わせておけばズケズケと。僕もあなたが気に食わなかったんですよ。運よく田中さんに助けられただけの存在で一緒に住むなんて許せない……! 僕だって一緒に住んで生活をサポートしたいというのに!」
「へっ、ざまあみやがれ! これは真の弟分である俺様だけの特権だ。お前がいくら頑張っても俺とはステージが違うんだよ! コラボカフェも俺が手伝うからてめえは必要ない、とっとと帰りな!」
「なんだこいつら」
俺はヒロインか。なんで野郎二人の取り合いに遭っているんだ。
師匠だ兄貴だ弟子だ舎弟だと面倒くさい奴らだ。俺みたいな冴えない男を取り合ってなにが楽しいんだか。理解に苦しむ。
「おい、お前らその辺に……」
「田中さんの厚意にあぐらをかいて……許せない。お前は僕が退治してくれる!」
「上等だ! 最近動いてなくて体はなまっちゃいるが、てめえ程度ボコすくらい夜飯前だぜ!」
「いい加減にしろ!」
俺はそう言って二人の頭部を上からゴツン! と殴る。
すると二人の顔面が勢いよくテーブルに激突し、埋まる。殴られた箇所からは煙が上がり、腫れ上がっている。
喧嘩両成敗だ。
「別に仲良くしろとは言わないが、仕事の時くらい喧嘩するな。次また騒ぎを起こしたら今回の仕事には関わらせないからな」
「「はい……」」
二人はテーブルに埋まりながらそう返事をする。
やれやれ、前途多難だな。
◇ ◇ ◇
初めての下見から一ヶ月の時が経った。
三上とダゴ助が喧嘩した時は先行きが不安になったが、驚くほど順調に準備は進んだ。
ダンジョン内にコラボカフェの建築。メニューの作成と料理のマニュアル化。素材の調達にダンジョン内の魔素量調節。全てがトントン拍子に上手く行った。
天月は仕事が忙しく参加することができなかったが、星乃と凛、ダゴ助とリリシアは積極的に手伝ってくれて、当日も店員として参加してくれることになった。
他にも三上が所属する鋼鉄の牡鹿ギルドの社員もヘルプとして入ってくれることになった。
店員は多ければ多い方がいい。他にも足立の伝手で店員を増やし、総勢五十名の大所帯となった。
これだけの面子が揃えば、きっと上手くいくだろう。
とうとう開店初日を迎えた「シャチケン海の家コラボカフェ」。俺は気合いを新たに現地入りするのだった。




