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社畜剣聖、配信者になる 〜ブラックギルド会社員、うっかり会社用回線でS級モンスターを相手に無双するところを全国配信してしまう〜  作者: 熊乃げん骨
第十七章 田中、ビーチに行くってよ

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第2話 田中、新しい企画を提案される

「このままじゃ駄目だ」


 俺は友人であり、今は同僚である足立にそう言われ「えっ」と驚く。

 今いるのは事務所の一角。

 昨日無事に銀座黄金都市ダンジョンでのRTAを終えた俺は、今後の配信をどうするか足立と話し合いを開始した。


 そしたら足立の第一声がそれだった。

 まさかそんな風に言われるとは思ってなかったので俺はとても驚いた。


「いったいどうしてだ? 昨日の配信はとても盛り上がったと思うんだが」

「ああ、確かに大盛況だった。同接も九千万人を超したし世界一位の伸びだった」

「じゃあいいじゃないか。なにが駄目なんだ?」

「同接はいいが……最近チャンネル登録者数が上がってないんだ。先月九億人を超えてからはほぼ横ばい。これじゃ八億台に戻るのも時間の問題だ」


 足立は空中にスクリーンを出現させ、そこに様々なグラフを出しながら説明する。

 確かに最近登録者の伸びが悪い。足立はそこが気になっているみたいだな。


「でも別に良くないか? チャンネル登録者数が九億人って世界一なんだろ?」

「甘い! 甘いぞ田中! そんな心持ちじゃDチューブ界隈を生き残れないぞ!」


 力説する足立。

 いやもう世界一なんだから生き残るもクソもないと思うんだが。いったいなんでこんなに盛り上がってるんだ? 俺が不思議に思っていると、


「というわけで、チャンネルを盛り上げるためにも『イベント』をやろうと思ってるんだ。田中も手伝ってくれるか?」

「……そういうことか」


 どうやら足立は俺にその『イベント』とやらを手伝ってほしかっただけみたいだ。

 それだけのために大げさな奴だ。別にこんな芝居がかった真似をしなくても、いくらでも手伝うというのに。

 こいつも意外と不器用な男だな。


「で、イベントってなにをやるんだ? ていうか俺に手伝えるものなのか?」

「ああ、これは探索者の力がないと成立しないイベントなんだ。内容はな……」


 足立は企画書を取り出すと、それを俺に見せながら説明を始める。

 なるほど、これは大がかりなイベントだ。成功したら盛り上がりそうだな。


 また忙しくなりそうだが、社畜時代とは違いその忙しさが少し楽しみだ。

 まさか労働を楽しみになる時が来るなんて、夢にも思わなかった。人生とは分からないもんだな。


◇ ◇ ◇


「みなさんこんにちは、田中誠です。今日は配信に来てくださりありがとうございます」


"こんにちは!"

"待ってた"

"こんシャチケン"

"今日は部屋からか"

"雑談配信助かる"

"告知ってなんだろ"

"リリたそ期待"


 俺がカメラに向かって挨拶すると、大量のコメントが流れ始める。

 カメラに向かって喋るという行為もだいぶ慣れてきたな。最初はガチガチに緊張したけど、今は手汗をかくぐらいで済んでいる。

 俺も成長したな。


 今回の配信タイトルは「久しぶりの雑談配信 ※重大告知もあります」だ。

 タイトルの通り、今日はある発表がある。俺としてはそれをとっとと発表して配信を終わらせてもいいのだが、こういった発表をする時はしばらく雑談をしてから発表するらしい。

 喋るのは苦手なんだが……まあこれも仕事だ。頑張るしかない。


"シャチケンまだ緊張してて草"

"初々しくてかわいい"

"これが登録者九億人の配信者の姿か……?"

"こういう垢抜けないところに沼るんだよな。いい加減にしてほしいわ"

"リリたそは?"

"シャチケンはそのままでいてくれ……"

"リリたそなら俺の隣で寝てるよ"

"くたばれ"


 俺としてはもっとちゃんと喋れるようにならなきゃいけないと思っているんだが、そのままでいてほしいという声も多い。

 足立もあまり変わりすぎずありのままでいいとは言っていた。

 本当にそれでいいのか不安になるが……まあ頑張ったところで饒舌にはなれないし、無理する必要はないか。


 俺はカメラの横に出しているカンペを読みながら会話を続ける。とてもじゃないがこれがないと話を展開し続けるのは不可能だ。


「ええと今日のトークデッキはこの前した星乃と買い物に行った時のことと、最近のリリについて、それとこの前くじ引きで商品券五百円分が当たったことですかね」


"楽しみなトークデッキだ"

"早く聞きたい!"

"りりたそ!"

"ゆいちゃんデートしたってこの前言ってたからな。田中視点助かる"

"くじ引きくんだけ毛色違いすぎない?"

"くじ引きくんは帰っていいよ"

"最後だけオチまで話してんじゃねえかw"

"りりたそ!"

"デートの話聞かせろ!!!!!"


「そうですね……じゃあ最初はくじ引きの話にしますね。いやほんと嬉しくて……」


"ズコー"

"草"

"なんでそうなんねん!!!!!"

"りりたそ!?"

"ここまで庶民感覚抜けてないの奇跡だろw"

"くじ引きくんには荷が重いって!"

"田中はぶれねえなw"


 俺は時折コメントに突っ込まれながらトークデッキを消化していく。

 普通にトークしているつもりなんだけど、やけにみんなは大げさな反応をしてくる。俺が盛り上げるのが下手だから手伝ってくれてるのか?

 だとしたらみんな優しいな。


"シャチケンのトークはいつも波乱で面白いなw"

"くじ引きの話も結構おもろかった"

"まさかあんな大事件に発展するなんてな"

"最初のあれが伏線になってたって気付いた時は鳥肌立ったわ……"

"映画化しろ"

"リリちゃんも元気そうでよかった"

"りりたそ!"

"ゆいちゃんのデート話ももっと聞きたかった"

"田中ァがデートと認識していなかったからしゃあない"

"ゆいちゃんの苦労が偲ばれる"


 ふう、なんとかトークデッキを全て消化できたな。

 時間を見ると、配信を開始してから一時間半経っていた。うん、時間としても丁度いい。そろそろあの(・・)告知をするとしよう。


「お待たせしました。そろそろ最初に言っていた告知に入ろうと思います」


"来た!"

"そういや告知あるんだったw"

"すっかり忘れてた"

"りりたそ!"

"なんの告知だろ?"

"DXシャチケンソードの再販であってくれ!"

"リリちゃんの育成ゲーム希望"

"それいいなw"


 みんな色々な要望を口にしてくれる。

 そういうのが好まれているんだな。コメントは参考になる。足立もこの声をリストアップしているだろう。

 だがこれからする告知を当てている人はいなかった。もっと引っ張っても盛り上がるかもしれないが、これ以上待たせるのも悪い。発表するとしよう。


「えー、それでは発表します。告知はこちらです、ドン!」


 スマホを操作して、告知画像を配信に載っける。

 そしてそこに書かれている文を俺は読み上げる。


「『田中誠コラボカフェ』開催決定です! 場所は池袋のダンジョン上層を予定しています。私が配信で食べた物を再現したメニューを多数出す予定ですので、楽しみにしてください」


"え?"

"は"

"ん?"

"うおおおおお"

"がち?"

"すげえ!"

"コラボカフェ来た!"

"マジかよ行かなきゃ"

"ダンジョンご飯食べれるの!?"

"りりたそ!?"

"リアルイベントキターーーー!!"

"これは財布が薄くなるな"

"楽しみすぎる!!"


 爆速で流れるコメントたち。

 そのどれも好意的なものだ。本当に喜んでくれるか不安だったけど、どうやらみんな楽しみにしてくれているみたいだ。


 それにしてもコラボカフェか。いったいどんな感じになるんだろうか?

 俺はバイト経験がないので飲食がどんな仕事なのかよく知らない。手伝えることがあればいいんだけど。


 ま、でももう発表したからにはやるしかない。楽しみにしてくれている人のためにも頑張るとしよう。

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― 新着の感想 ―
魔素取り入れて客達の全体的な強さ上がったりして笑
おはようございます。現状に満足して対策をせず、 配信を続けていたら足立さんが指摘する通り、 登録者はゆっくりと減少していきそうです。 田中誠さんが接客したり料理を作る、 後は抽選で選ばれた視聴者に、 …
配信見てるのって探索者もいるんかな?居るんだとしたらシャチケンが足立の財布を軽くしていた時よりも多くのメニューを作る必要がありそうな気がするけど
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