表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
社畜剣聖、配信者になる 〜ブラックギルド会社員、うっかり会社用回線でS級モンスターを相手に無双するところを全国配信してしまう〜  作者: 熊乃げん骨
第十六章 田中、剣を直すってよ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

232/236

第6話 田中、剣を修復する

「ここら辺でいいか」


 俺は地面が平らめな場所を見つけると、そこに鞘から抜いた剣を置く。

 俺が折った箇所は薫さんの手によって綺麗に修復されている。後はアダマンタイトで強度を取り戻すだけ。


"なにをするんです?"

"ここで直すのかな"

"シャチケンそんなこともできんの?"

"確か修復できる道具があるはず"

"そんなことより塔がもう地面にぶつかりそうなんだけど!?"

"ぎゃー! 死ぬ! シャチケン助けて!"

"今いいとこだから静かにして"

"草"

"都内住みは大変だなあ"


 俺は刀身の上に手に入れたアダマンタイトを置いた後、ビジネスバッグの中から小さなハンマーを取り出す。

 それを見たリリは首を傾げる。


「たなか、それなに?」

「これは『修理の小槌(リペアハンマー)』。素材を消費して武器や防具を修理することができる道具なんだ。これを使えば剣を直せるはずだ」

「おおー、すごい」


 この小槌もダンジョンで稀に取れる貴重な道具だ。

 貸してくれた薫さんに感謝しないとな。


「強く叩けば叩くほど、そしてその時に魔素を込めれば込めるほど、強靭な武器に仕上がるそうなんだ。だから思い切りやるとしよう。リリ、少し離れていてくれ」

「うんー」


 リリはとてとてと離れて、岩陰に隠れる。

 あれくらい離れてれば大丈夫だろう。


"なにが始まるんです?"

"わくわく"

"ドローンくんも勝手に離れてて草なんだ"

"なにか危機を察知したんやろね"

"ドローン「怖っ、離れとこ……」"

"かしこい"

"賢明な判断"


 失敗してまたアダマンタイトが手に入る保証はない。

 この一回に全力を込める。


「いくぞ」


 俺はハンマーに大量の魔素を送り込んだ後、力の限りハンマーを振り下ろす。

 ガギィィィン!! という爆発音と共に、ハンマーはアダマンタイトに激突する。そしてその瞬間、修理の小槌リペアハンマーの効果が発動する。


 アダマンタイトが赤熱化すると、俺の剣と反応を起こし一体化していく。


"ぎゃああああ!!"

"凄え衝撃ww"

"前が見えねェ"

"鼓膜ぶっ壊れた"

"うおおおお、避難してる場合じゃねえ"

"都内民は配信見てないで避難して"

"やったか!?"

"フラグやめろ"


 少し強く叩きすぎたみたいで、修理の小槌(リペアハンマー)を振り下ろした箇所には、大きな陥没穴クレーターができてしまった。


 うっかり剣をへし折ったりしてないよな? 不安になる俺だが、土に少し埋もれた剣を発見し、胸をなで下ろす。


「おお……元通りだ」


 拾い上げた俺の剣は、元の輝きを取り戻していた。

 いや、前以上と言ってもいい。新品同然の輝きとなった俺の剣。その刃は少し見ただけでも分かるほど、研ぎ澄まされている。見ているだけでうっとりするほどだ。


 どうやら俺の手に入れたアダマンタイトはかなり高品質だったみたいだな。


"おお、なんか凄え"

"これもう芸術品だろ"

"直った!"

"おめ"

"これで更に強くなったね(絶望)"

"全国のモンスターが震えてそう"


「たなか、どう? 直った?」

「ああ、無事直ったぞ。ありがとうなリリ、助か……ん?」


 リリの方を向きながら剣を鞘に納める。

 するとサクッという音と共に腰が軽くなる。

 いったいなんだと思い下を見てみると、なんと鞘に納めた剣が地面に突き刺さっていた。


 そして剣を納めたはずの鞘の下半分が、綺麗に斬れていた。


「え、鞘を斬ったのか……!?」


 俺は剣を拾い上げ、その刀身を眺める。

 どんだけ切れ味が高ければ納めた鞘を斬ってしまうんだ。俺はとんでもない剣を手に入れてしまったのかもしれない。


"ひいっ"

"やばすんぎ"

"ヤバい奴にヤバい武器を渡すな"

"鬼に金棒どころの騒ぎじゃねえな"

"まあシャチケンは鬼より強いんですけどねHAHAHA"

"笑いごとちゃうでほんま"


「おー、凄い。たなか、なにか技やって」

「え? そうだな、試し切りくらいはしてみるか」


 磁場の影響でコメントは読めないけど、まだ視聴者は見てくれているはず。

 視聴者サービスのためにも、見どころを作っておくか。

 俺は下半分が切れてしまっている鞘に再び剣を納め、後ろにあった大きな岩を見る。


 そして腰を低くして、集中する。研ぎ澄まされた刃のように深く鋭く集中した俺は、岩めがけて居合を放つ。


「我流剣術、またたき


 音を置き去りにして、高速の剣閃が走る。

 的にされた大きな岩は音もなく両断され、一瞬後に上半分が地面に落ちる。その切断面はとても綺麗で、一切の凹凸なく滑らかであった。


「凄い、斬った感覚がまるでなかった。なんて切れ味なんだ……!」


 生まれ変わった剣の切れ味に感動し、何度も剣を振ってみる。その度に岩がスパスパと斬れていき、気持ちがいい。

 素晴らしい切れ味だと楽しんでいると、リリが俺のスーツの端をくいくいと引っ張ってくる。


「ん? どうしたリリ」

「たなか。あっちも斬っちゃってるよ」

「あっち?」


 リリの指差す方向に視線を移す。

 それは俺が斬っている岩がある方向の、更に奥だった。そっちには俺たちがやって来た通路があるのだが、いったいなにを斬ったんだ……と思っていると、通って来た方角の壁がバラバラに斬り裂かれ、崩れてしまう。


「あ……」

「うおー、バラバラ」


 どうやら気づかない間に斬撃を飛ばしてしまっていたみたいだ。

 おかげでダンジョンの深層部分をバラバラに切り裂いてしまった。こ、こんなに切れ味がいいとは思わなかったんだ、不可抗力だ。


"あっ"

"草"

"なにやってんだよ田中ァ!"

"なにって……試し切りをしただけだが?"

"そうかな? そうかも……"

"今回はダンジョン破壊は仕事に含まれてませんよ"


 ダンジョンに自己修復機能があるとはいえやってしまったな。

 これは帰る時大変だぞ……と思っていると、俺はあることに気がつく。


「ん? コメントが見えるようになってる」


"え"

"マジ?"

"たなかー! 見てるゥー?"

"おお、ついに"

"早く戻ってきて!"

"塔がもうすぐそこまで落ちてきてるんだって!"

"東京がヤバい"

"もう時間ないって!"


 どうやら俺が深層の広範囲を斬ってしまったことで、磁力が乱れ一時的に回線が復活したようだ。

 まさかこんなことがあるなんてな、などと思いながらコメントを見ていると、気になるコメントをいくつか見かける。


「塔が落ちてきた? 東京がヤバい? どういうことですか?」


 不穏なワードがいくつもある。

 なんだか嫌な予感がしてきたぞ。


"東京の空からダンジョンが降って来てんの!"

"もうすぐ地上にぶつかっちゃう!"

"東京さんは大変やなあ"

"助けてシャチケン!"

"討伐一課がダンジョンに侵入したから田中も他人事じゃないぞ!"

"ゴツい輸送機から飛び移る天月さんが写真撮られてたよ!"


「……なるほど、事情は理解しました。情報ありがとうございます」


 どうやらコメントが拾えない間に、まずいことが起きていたみたいだ。

 色々な情報が寄せられているけど、ダンジョンが落ちて来ていて、天月がそれの対処に回っている。重要なのはこの二つだ。


 今すぐ助けに行くぞ、待ってろ天月。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
この切れ味、制御するために更に技も磨かれるのかな このままだとかなり手加減しないと危なくて振り回せない
よし、今度は塔を斬ろう!
こんばんは。 まさに鬼に金棒…!! 某語録風に言うなら『怪物を超えた怪物、を更に超えた怪物』になってしまいましたな田中さんww
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ