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社畜剣聖、配信者になる 〜ブラックギルド会社員、うっかり会社用回線でS級モンスターを相手に無双するところを全国配信してしまう〜  作者: 熊乃げん骨
第十五章 田中、折ったってよ

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第3話 田中、変人たちに会いに行く

「駄目だ……全然見つからない」


 家に帰った俺は、ぐでっとソファに体を預ける。

 薫さんに威勢よく啖呵を切ってから、もう一週間の時が経った。


 難度の高いダンジョンに絞って探索をしているが、アダマンタイトは一向に見つからなかった。

 まあそれも無理ないか。今まで結構なダンジョンを潜っているが、アダマンタイトを見たことはない。折れた剣だって俺の師匠が見つけた物。俺はそれを貰っただけだ。

 今まで見たことがないんだから、そりゃ簡単には見つからない。


「にしても疲れたな……」


 ダンジョンに潜るだけでも疲れるのに、今の俺は武器がない。

 必然的に素手で戦うしかなく、いつもよりも疲れが溜まる。10代の頃は10徹しても動けたんだけど、今はもうそうはいかないからな。


「おいタナカ! 最近わらわを放ったらかし過ぎではないか!? 暇で仕方ないぞ!」


 ソファでゆっくりしていると、エルフのリリシアが隣に座ってくる。

 異世界からエルフのお姫様である彼女だが、もうすっかりこっちの世界に順応してしまっている。

 家の中でぐうたら過ごしているせいか、出会った時よりも少し肉がついているように見える。最近はそれを気にして運動を始めたみたいだが、それ以上にスイーツを食べることにハマってしまっているので、ダイエット成功は遠そうだ。


「あんま無茶言うなよ姫さん。兄貴も忙しいんだからよ」


 そう俺を擁護してくれるのは、魚人ディープ・ワンのダゴ助。

 エルフ以上に人とかけ離れた見た目をしているが、リリシア以上にこっちの世界に馴染んでいる。最近はハンバーガーと古着にハマっているらしく、自分のチャンネルで得た収益で宅配や通販を使って趣味を謳歌している。

 こいつ俺より人生楽しんでないか?


「姫さんも兄貴にべったりじゃなくて他に趣味を見つけた方がいいんじゃねえですかい? ほら、最近またふっくらしてき……」

「うるさいっ!」

「ほぐぅ!? 足がァ!」


 リリシアの見事なローキックがダゴ助の右足にヒットする。

 あれは痛そうだ。ダゴ助はその場にうずくまり痛そうにしている。リリシアにダイエットの話題は厳禁だってのに、迂闊な奴だ。


 ダゴ助はしばらく痛そうにしていたが、少しするとすくっと立ち上がる。

 こいつも頑丈な奴だ。


「……ったく、おっかねえ姫さんだ。ですが兄貴、確かに最近働き過ぎってのは俺も思いますよ。剣を早く直したいってのは分かりますが、少し休んだ方がいいですよ」


 ダゴ助にそう諭されてしまう。

 まさか異世界から来た魚人に正論を言われる日が来るとはな。俺もいよいよかもしれない。


「まあそれはそうなんだけどな。いつまた異常事態が起きるか分からないからな。その時のためにも武器は確保しておきたいんだ」

「なるほど……。確かに最近は物騒ですからね」


 最近のダンジョン発生率は明らかに『異常』だ。毎週のように新しいダンジョンの発生が報じられているし、そのダンジョンの難度も昔よりずっと高い。


 今の探索者は昔よりレベルが上がってるからなんとか対処できているが、その均衡もいつ崩れるかわかったもんじゃない。

 問題が起きた時、俺一人で対処できるとは思ってないが、その時のために万全を期しておきたい。


「でも兄貴が倒れたら本末転倒ですよ。そのアダマンタイトってのをもっと効率的に探せる手段を探った方がいいんじゃないですか?」

「効率的に探す方法か……そんなものあるかねえ」


 いい鉱石が採れるダンジョンの情報はあらかた調べて、既に探索し尽くしている。

 これ以上なにをすればいいか。俺はしばらく考え、そして一つの考えにたどり着く。


「あの人ならなにか知ってるかもな。他にも(・・・)聞きたいことがあるし、久しぶりに会いに行ってみるか」

「おいタナカ! また出かけるのか!? それよりもわらわの相手をしろ!」


 俺はわがままなお姫様の相手をしながら、その人物に会いに行く算段をつけるのだった。


◇ ◇ ◇


「やあ、よく来たね田中クン。歓迎するよ」


 白衣をはためかせそう言ったのは、俺の知り合いの研究者、黒須くろすまきさんだった。

 魔導研究局の局長である彼女のダンジョンや魔素に関しての知識は日本、いや世界でもトップクラスだ。

 彼女ならなにか妙案をくれるんじゃないかと思い、俺は魔導研究局を訪れたのだ。


「アダマンタイトの剣が折れちゃったんだってねえ。精錬されたアレは理論上壊れないはずなんだけど、まあキミに常識は通用しないか」


 椅子に座ってぐるぐる回りながら牧さんは喋る。

 相変わらず自由な人だ。


「ま、ひとまずモノを見せてくれたまえよ。話はそれからだ」

「はい」


 近未来的な台の上に折れた剣を置くと、牧さんの助手の大男がやって来て色々と計測を始める。確かこの人の名前は「サム」とか言ったな。

 マスクで覆っていて素顔は見えず、声を発することもない。中身が機械と言われても納得できる。


「ふむふむ、なるほど……やはり金属疲労みたいだねえ。あのアダマンタイトも金属疲労を起こすとは面白いデータが取れた。感謝するよ田中クン」

「はあ、それはどうも」


 あの牧さんが興奮するなんて、余程面白いデータなんだろう。

 俺は普通に剣を振るってただけなんだけどな……と思っていると、一人の人物が牧さんの研究室に入ってくる。


「おお、来ていたか田中殿! 待っていたよ!」


 テンション高く入って来たのは、牧さんと同じく白衣を来ている男性だった。

 彼の名前はネロ・レヴォック。リリシアやダゴ助と同じく異世界からやって来た人間だ。


 彼は向こうの世界で研究者だったらしく、今は牧さんのいるここに置いてもらい、研究を手伝っている。

 彼が来たことでダンジョンの研究は更に進み、日本は他国に追随を許さない技術レベルにまで達したらしい。だが、


「おやおや、また筋肉が成長したんじゃないかい? 魔素量も増えているし、ますます成長しているようだね……素晴らしい。ふふ、人間という枠組みを超える日も近いかもしれないねえ。あ、細胞少し貰っていい?」

「いや、それは勘弁してください……」


 優秀な人物ではあるのだが……いかんせんちょっと変わっている。

 牧さんといい、研究者は変人しかいないのか?


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― 新着の感想 ―
『研究者』と『研究家』は厳密には違うけど、どちらも変人が多いのは確かですよね。 ここに『マニア』が加わると、カオスに(笑)
研究者は自分の興味有ることしか研究しないモノ 研究にとって常識なぞ新たな発見の邪魔なだけよ
そうだよ、研究者は基本的に変人奇人だよ
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