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社畜剣聖、配信者になる 〜ブラックギルド会社員、うっかり会社用回線でS級モンスターを相手に無双するところを全国配信してしまう〜  作者: 熊乃げん骨
第十三章 田中、北の地に行くってよ

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第10話 星乃、成長を見せる

"これやばくない!?"

"めっちゃモンスターいるじゃん"

"アイスオークの顔怖すぎる"

"ま、まままままだ焦る時間じゃない"


 突然のことにコメント欄も慌ただしくなる。

 探索者たちもモンスターが急に現れたことで焦っている者が多い。そんな中、


「陣形を組め! 背をモンスターに見せるな!」


 黒曜石の熊(オブシディアンベア)の社長、熊岩さんが叫ぶ。

 すると同じギルドの人員で集まり、陣形が組まれる。


 盾役タンクたちが円形に集まって盾を外側に構え、円の中心部には攻撃役アタッカーや魔法使いが集まる。

 訓練された無駄のない動きだ。チームでの訓練もちゃんとしているみたいだ。

 さすがベテランチームと言ったところだろうか。


「田中さん! 私たちはどうしましょう!?」

「落ち着け星乃。焦っていたら足元をすくわれるぞ」


 俺はそう言って星乃を落ち着かせる。

 ダンジョンでは冷静さを欠いた奴から死ぬ。ピンチの時ほど落ち着かなければ探索者は務まらない。


「ダンジョンでは囲まれないのが最善だが、転移トラップとかで囲まれることはある。そうなったら全てのモンスターを目で追うのは不可能だ」

「はい、そういう時はどうしたらいいんですか?」

「簡単だ。気配を読むんだよ。慣れれば暗闇でも昼みたいに動ける」


"ゲキムズ定期"

"「簡単だ」だっておww"

"それができたら苦労し(略)"

"現代のラストサムライ"

"コウモリかな?"


「気配を読む……ですか」

「ああ。他にも相手の足音や呼吸、空気が流れる音とかも感じ取るんだ。そうすれば視覚に頼る必要はなくなる」

「分かりました」


 星乃はそう言うと剣を構え、目を閉じる。

 凄い集中力だ。ほんの少ししか教えてないのに、ここまで成長するなんてな。


『グルル……』


 俺が感心していると、アイスオークたちがジリジリと距離を詰めてくる。武装した集団よりも俺たちの方が倒しやすいと考えたんだろう。

 だけどお前らが狙っているこの子は、残念ながら俺の自慢の弟子だ。後悔することになるぞ?


『ガアアアアッ!!』


 三体のアイスオークが一斉に襲いかかってくる。

 それと同時に樹上のアイスゴブリンたちが矢を放ってくる。


 連携の取れた動きだ。こいつら単体の脅威度はそれほど高くないが、こうも連携を取られたら普通の探索者はなすすべもなくやられてしまうだろうな。

 そう――――普通の探索者なら。


「……見えたっ!」


 星乃は飛び上がりアイスオークの棍棒をかわすと、横に回転しながら剣を振るい、降りかかる矢を全て吹き飛ばしてしまう。


「えーいっ!」


 そして回転した勢いそのままにアイスオークに斬りかかり、その硬い肉体を一刀両断してしまう。

 すると他のアイスオークが仲間のかたきを取ろうと背後から襲いかかるが、星乃はそれを見ずに感知し、後ろに宙返りしてかわす。


"いい!?"

"動きやばすぎる"

"ゆいちゃんいつの間にこんな強くなったんや"

"いや前から力は強かったけど、動きにキレがありすぎる"

"凛ちゃんや天月さんと一緒に住んでるから、師匠には困らないんだろうな"

"いやそれにしても強すぎるだろw"


「これで……どうだぁ!」


 星乃は空中で姿勢を制御すると、剣を振り下ろしアイスオークの体を斬りつける。

 虚を突かれたアイスオークは『グオォ!?』と叫ぶと、その場に崩れ落ち、いくつかの素材を残して消え去る。

 無駄のないいい動きだ。満点をあげてもいいだろう。


『グウ……ウウ……』


 星乃の思わぬ反撃にひるむアイスオーク。

 仲間がやられたことで一旦逃げようとするが、俺はそいつの手首をつかんでそれを引き止める。


「どこに行くんだ? そっちから来たんだ、勝手に帰るなよ」

『グア……!?』


"ひえっ"

"この社畜、怖すぎる"

"死んだ目なのがいい味してるな"

"アイスオークくんが不憫だ"

"可哀想に見えてきた"

"逃げようとしてるけど腕ぴくりとも動かなくて草"


 アイスオークは必死にもがくが、逃がすつもりはない。

 さて、どう始末をつけたものか。


「ぐっ、駄目だ!」

「こいつら厄介だぞ!」


 苦戦している探索者たちの声が聞こえてくる。

 見れば鋼鉄の牡鹿(アイアンスタッグ)の面々がモンスターに苦戦している。どうやらモンスター同士の連携に乱されているみたいだ。

 よし、加勢してやるとしよう。


「ほいっ、と」


 アイスオークの手首をぎゅっと握り、俺はアイスオークをモンスターの群れに投げ飛ばす(・・・・・)

 音速を超える速度でぶん投げられたアイスオークは衝撃波を撒き散らしながら、他のアイスオークたちに激突し爆散する。


「ぎゃー!!」

「な、なにが起きたんだ!?」


 突然モンスターが爆散し、驚く鋼鉄の牡鹿(アイアンスタッグ)の探索者たち。

 ちょっと強く投げすぎたかとヒヤヒヤしたが、探索者たちには被害は出なかったみたいだ。


"ひいっ!"

"めちゃくちゃ過ぎる"

"ボーリングかな?"

"ストライク!w"

"探索者の人ガチビビリしてて草"

"まああれは驚いてもしゃーない"

"アイスオークくんも可哀想や"

"汚え花火だ"


「おい、大丈夫か?」


 俺は鋼鉄の牡鹿(アイアンスタッグ)の面々に近づく。

 見た限り大きな怪我はしていなさそうだ。人が近くにいる時はもっと気をつけなきゃいけないな。


「あ、ありがとうございます田中さん。助かりました」

「アイスオークをあんなにあっさり……やっぱり田中さんは凄いんですね!」


 キラキラした目を向けてくる探索者たち。

 なんか恥ずかしいな。


"シャチケン照れてて草"

"他の人とダンジョン潜ることないから、こういうのに慣れてないんやろな"

"ゆいちゃんつまらなそうな顔してて草"

"旦那を取られたと思ってるのかな? かわいい"


「お前も大丈夫か?」


 俺は腕を少し負傷している探索者に話しかける。

 しかしその人物は気遣った俺のことをキッと睨みつけてくる。


「僕なら大丈夫です。この程度のモンスター、僕たちだけで対処できます」


 そうキッパリと拒絶されてしまう。

 ……ん? よく見たらこいつ、ダンジョンに潜る前に突っかかってきた三上とかいう探索者じゃないか。

 強がっちゃいるが、さっきの戦闘で怪我しているみたいだし、放っておけないな。


「いやでも怪我を……」

「大丈夫だと言っているでしょう! 僕に構わないで下さい!」


 そう言って三上はモンスターのいる方へ走り出してしまう。

 おいおい、大丈夫かあいつ?


"なんだあいつ、感じ悪いな"

"鋼鉄の牡鹿(アイアンスタッグ)の三上じゃん。最近調子悪いから荒れてんでしょ"

"ちょっと前はよく雑誌のインタビューとか出てたよな"

"意識高いこと言ってたのに全然だなw"

"まあ最近はモンスターも強くなってるから活躍できないのもしゃあない"

"みんなが田中ァみたいに強いわけじゃないからな……"


 三上は心配だが、見た限りアイスオークくらいなら一人でも倒せるだろう。

 他に手助けが必要そうな奴はいるだろうか。


「うわあ!? デケえのが来た!」

「ひい!? 助けてくれ!」


 声のした方を見ると、そこには巨大なイノシシのモンスターが怒った様子で立っていた。

 牙が氷でできているモンスター、フロストボアだ。

 鋭い牙に厚い毛皮。特殊な能力を持っているわけじゃないが、その巨体から放たれる突進は並の探索者では一撃でKOされてしまう。

 中層に出てくるモンスターの中ではかなり強い部類と言っていいだろう。


"うわ強そうだなあいつ"

"フロストボアは下層クラスのモンスターだからな"

"あんなのが中層にいるってやっぱこのダンジョンやばいだろ"

"シャチケンやってやれ!"


 コメントで言われるまでもない。

 俺は助太刀に行こうとするが……それよりも早く、フロストボアの前に立つ人物がいた。


「イノシシちゃん。アナタの相手は私。少し遊んでアゲル♪」


 フロストボアの前に立ったのは雪さんだった。

 レイピアを抜き、構える雪さん。どうやら久しぶりに雪さんの剣技が見れるようだ。


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― 新着の感想 ―
何一つ簡単じゃなくて笑っちゃうw
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