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社畜剣聖、配信者になる 〜ブラックギルド会社員、うっかり会社用回線でS級モンスターを相手に無双するところを全国配信してしまう〜  作者: 熊乃げん骨
第十三章 田中、北の地に行くってよ

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第9話 田中、戦いを見守る

「モンスターが出たぞ!」

「囲んで叩け! 落ち着けば大丈夫だ!」


 ダンジョンを進んでいれば当然モンスターと出会う。

 俺と星乃、そして雪さんは最後尾を歩いているので、必然的にそれらと戦うのは前を歩くギルド所属の探索者たちだ。


 有名大手ギルド『黄金獅子(ゴールドレオ)』。

 中堅ギルド『黒曜石の熊(オブシディアンベア)』。

 そして勢いのある新興ギルド『鋼鉄の牡鹿(アイアンスタッグ)』。


 三つのギルドはそれぞれ十人ほどのチームを組み、モンスターの対処に当たっていた。

 まだ上層ということもあって出てくるモンスターもそれほど強くはない。俺も雪さんも手を出すことなく見守っていた。


「……どう、田中ちゃん? 彼らの戦いぶりは」


 探索者たちの戦いを見ていると、雪さんが話しかけてくる。

 どう、と聞かれてもなあ。なんて答えりゃいいんだろうか。まあ見たままの感想でいいか。


「いいんじゃないですか? どのギルドも連携が取れていると思いますよ。ただ……」


 俺は真っ白な毛皮の狼『スノーファング』と戦っているギルドを見る。


鋼鉄の牡鹿(アイアンスタッグ)の彼らは独断専行気味ですね。筋はいいんですが」

「そうね。みんな才能はあるんだけど、まだ若いわね。そこが可愛くもあるんだケド」


 一人一人の動きはいいんだけど、連携がチグハグしているように見える。

 お互いの役目を果たそうとはしているが、全員が活躍しようとしているせいで、連携が上手く繋がっていない。成果を出そうという意識が先行して空回っているんだろう。


 俺も昔は師匠に早く認められようとして、空回っていたことがあるから気持ちは分かる。


「なにか重大なミスをする前に忠告した方がいいですかね?」

「う〜ん、そうしたいのは山々だケド、きっとそれは逆効果になっちゃうわ。なにか起きたらすぐフォローできるようにだけしておきましょ」

「分かりました」


 確かに雪さんの言う通りかもな。

 鋼鉄の牡鹿(アイアンスタッグ)ギルドの面々は言って聞くタイプに見えない。無駄に仲をこじらせるよりも、見守っていた方が良さそうだ。


「あ、田中さん! 道が開きますよ!」


 星乃の指差す先を見ると確かに道が開いて大きな空間になっていた。

 その空間からは今までよりも強い魔素を感じる。どうやらここから中層に入るみたいだ。


「うわあ……凄い所ですね」


 道が開くと、そこは巨大な『雪原』だった。

 辺り一面の銀世界で、少し進んだ所には木がたくさん生えている。


 おそらくどこかに下層へ繋がる道があるはずだけど、今日の探索は中層までの予定だ。ここら辺を探索したら今日は帰還する手筈となっている。


"広いなこのダンジョン"

"氷雪系ダンジョンでここまでの規模は珍しいな"

"中層くらいなら他の探索者でなんとかなるからシャチケンの出番はなさそう"

"田中ァだけ深層に行ってくれないかな……w"

"感覚が麻痺してるけど深層の配信なんて滅多にないからな"

"ここの視聴者はみんな田中に脳を焼かれてるから仕方ない"


 雪原の中を進む俺たち。

 そうして木が生えている森の中に足を踏み入れると、先頭を歩いている探索者の足が止まる。


「……なにか来る」


 すると次の瞬間、俺たちの頭上からいくつもの『矢』が降り注いでくる。

 俺は剣を握りそれらを切り落とそうとするが、列の先頭にいた人物が動いたので、一旦剣を抜くのをやめる。


防壁ウォール火炎ラハト!」


 炎の壁が探索者たちの前に出現し、降り注ぐ矢を全て焼き尽くす。

 それをやったのは鋼鉄の牡鹿(アイアンスタッグ)ギルドの若きエース、三上修司だった。ここまでの道中では剣での戦闘しかやっていなかったが、どうやら魔法も使えるみたいだな。


「上だ! 樹上になにかいる!」


 探索者の一人が叫ぶ。

 樹上に目を向けると、そこには青い肌をしたゴブリンが数体、枝の上に立っていた。


「アイスゴブリンか」


 寒冷地に適応したゴブリン、アイスゴブリン。

 氷系の低級魔法を使える以外は普通のゴブリンで、それほど強い相手じゃない。しかし奴らは手先が器用で、道具が使える。

 樹上のアイスゴブリンたちは手に弓と矢を持っている。正面からやりあえば苦戦する相手じゃないが、上から矢を浴びせられるのは中々面倒だ。


「あれは僕がやる! みんなは周囲の警戒を……」

「待て三上! 他にもなにか来る!」


 ドサドサドサ! となにかの足音が近づいてくる。

 その足音の主は猛スピードで俺らのもとに姿を現す。


『オオオオオォッッ!!』


 アイスゴブリンと同じく青い肌をしたオーク、アイスオークだ。

 アイスオークはその手に氷柱ツララを削り出して作った氷の棍棒を握っている。


「ゴブリンだけじゃなくてオークまで! だが僕を舐めるなよ……!」


 三上は剣を抜くと、矢を避けながらアイスオークに斬りかかる。

 いい太刀筋ではあったが、その攻撃は氷の棍棒に受け止められてしまう。アイスオークは中層に出てくるモンスターの中でも強い部類だ。

 一対一ならまだしも、ゴブリンの矢を気にしながらでは勝つのは難しいみたいだ。


「田中ちゃん、気づいた?」

「ええ……囲まれてますね」


 俺たちを囲うように、たくさんのモンスターが出現していた。

 ゴブリンやオークだけじゃない。他にもたくさんの氷雪系モンスターがいる。


 中層でこれだけのモンスターが出るなんて滅多にない。

 雪さんが感じたっていう嫌な予感は、どうやら当たっていたみたいだな。


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