表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
社畜剣聖、配信者になる 〜ブラックギルド会社員、うっかり会社用回線でS級モンスターを相手に無双するところを全国配信してしまう〜  作者: 熊乃げん骨
第十三章 田中、北の地に行くってよ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

201/236

第8話 田中、道茸を食う

 どんどん寒くなる道を進む俺たち。

 いつもだったら浅い箇所は駆け抜けてしまっているので、こうしてゆっくり進むのはなんだか新鮮だ。

 特に黒犬ブラックドッグギルドにいる時はノルマがキツ過ぎるせいで爆速で潜っていたな。ダンジョンのトラップも解除する暇なくて回避できない時は踏み抜きながら強引に進んでたな。

 あんな無茶してよく生きているもんだと自分でも感心する。


「おい! あれって……!」

「やった! 鉱石だ!」


 前の方が騒がしくなってきたのでそちらを見ると、喜ぶ探索者たちの顔が見える。

 どうやらダンジョン産の鉱石を見つけたみたいだ。探索者たちはピッケルを取り出すと我先にと採掘を始める。


「やった! 大量だ!」

「これだから初探索ファーストアタックは最高なんだ!」


 興奮した様子で採掘する探索者たち。

 ダンジョン内で採れる鉱石はどれも貴重で、高価で取引される。


 魔素結晶は分解すれば高品質のエネルギーになるし、ダンジョン産の金属は地球上のどの物体よりも硬くて加工も容易だ。武具への転用もできるし、欲しがる企業は山ほどいる。


「田中さん、私たちは採掘しなくていいんですか?」

「そうだな……俺は別に必要じゃないけど、星乃の装備を改良してもいい頃だし、少し採掘してくか」


 星乃の得物の大剣は頑丈だけど、星乃の腕力が強いせいで傷んできている。ダンジョン産の金属を使って修理と強化をするべきだろう。


「あ、でもピッケルを持ってきてないです……田中さんはありますか?」

「俺もないけど、なくて大丈夫だ。ほら」


 俺は近くに生えていた青い鉱石の近くにしゃがみ込み、その側面を手刀で叩く。

 するとその鉱石はパキッ! と綺麗に折れて俺の手に収まる。うん、純度が高いいい鉱石だ。これなら良質な武器の素材になるだろう。


「前にも教えただろ? 物の弱い箇所を見極めて叩けば、弱い力で壊せる。やってみろ」


"それができれば苦労しねェ!(n回目)"

"ピッケル「あの……僕は……」"

"ピッケルくん涙目で草"

"なんで素手で採掘してるんですかね……"

"さすがにこれはできないだろ(フリ)"

"フラグでしかない"


「こうですか? えい」


 星乃が真似して叩くと、鉱石がパキン! と音を立てて割れる。

 まだ狙いが少し甘いが、筋がいい。少し練習すればもっと綺麗に割ることができるようになるだろう。


"知ってた"

"だからなんでできるんだよ!"

"これで現役大学生ってマジ?"

"こんなバケモン生み出したんだからシャチケンはちゃんと責任取れよ"

"ゆいちゃん見てる他の探索者ビビってて草"

"そりゃ隣の奴が素手で鉱石砕いてたらビビるww"

"ダンジョンの鉱石ってそれ用のピッケルでも採取するの大変なのに……"


 必要な分の鉱石の採取を終え、それらをビジネスバッグの中に収納する俺。

 だがまだ他の探索者たちは採取を終えていない。普段だったら先に進んでしまうところだが、今回は他の探索者の安全を守るのも仕事だ。

 なにか他のことやって時間を潰すか。


「……お、こんなところにキノコが生えてるじゃないか」


 俺は足元に生えている小さな白いキノコに気がつく。

 被っている雪を払い退け、それを採取する。薄く光るそのキノコを星乃は興味深そうに見る。


「可愛いキノコですね。それは食べられるんですか?」

「ああ。雪白茸ゆきしろだけっていって氷雪系ダンジョンでだけ採れるキノコなんだ。小ぶりだけど甘くて美味いぞ」


"当然のように食べる話になってて草"

"ゆいちゃんもすっかりダンジョン飯に躊躇しなくなったなw"

"この前探索者がダンジョンのもの食って腹壊してたから真似しちゃ駄目だぞ"

"※彼らは特別な訓練をしています"


 雪白茸は生でも食えるけど、表面を焼いた方が美味い。

 一応BBQできる道具も持ってきているけど、ここに長居するわけじゃないから、さっと調理して済ませるとしよう。


「ほっ」


 俺は右手を高速で振動させ、温度を上げる。

 そのまま振動を上げていくと、右手がボッと発火する(・・・・)。よし、これでキノコを炙るとしよう。


"ひえっ"

"え"

"手燃えてて草"

"なんでもありかよw"

"発火能力者パイロキネシスだったのか"

"え、これ魔法使ってないよね?"

"人の可能性って無限大なんだな"

"ゆいちゃんもすぐできるようになるんだろうな……"

"若者の人間離れ"


「凄い、道具なしで火を起こせるなんて便利ですね!」

「星乃もすぐにできるようになるさ。ほら、食べていいぞ」

「わ! いいんですか? いただきます!」


 表面を炙った雪白茸を手渡すと、星乃は嬉しそうにそれにかじりつく。

 いい食べっぷりだ。


「ん〜♡ 美味しいです! 焼いた表面はとろっとしてて、中はシャーベットみたいにしゃくしゃくしてて初めての食感です! 味もほんのり甘くて、まるでスイーツみたいです!」


 興奮気味に語る星乃。気に入ってもらえたみたいでなによりだ。

 雪白茸は魔素を含んでいるが、その量は少ない。普通の探索者が食べたら気分を悪くするかもしれないけど、星乃はダンジョンの食材に食べ慣れてきているので問題ないだろう。


"あかん、腹減ってきた"

"なんでこう、シャチケンの作る飯はどれも美味そうなんだ(ガチギレ)"

"はやく田中食堂をオープンしてくれ"

"コラボカフェでもいいぞ"

"ていうかシャチケンのグッズの再販まだ? 足立ィはなにやってんだよ"

"分かる。早く田中のアクスタ揃えたいのに"

"話変わってて草"

"この前シャチケンの痛バッグ持ってる奴いてさすがに笑った"

"シャチケンの格ゲーも待ってる"

"環境田中まみれになりそうだなそれ"


「……お、どうやら採取も終わったみたいだな。進むとするか」

「もぐもぐ……ごくっ。はい、行きましょう!」


 進み始めた探索者たちの後を、俺たちはついて行く。

 ちなみに今回は中層までの探索予定だ。これだけの面子がいれば変なことは起きないと思うけど、どうなることやら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
毎回最後にフラグ立てなきゃ気が済まないのか(^_^;)
人間の可能性すごくて笑う
格ゲー…田中対策は嫁を使うしかないな 流石の田中も嫁には弱くなりそう
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ