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社畜剣聖、配信者になる 〜ブラックギルド会社員、うっかり会社用回線でS級モンスターを相手に無双するところを全国配信してしまう〜  作者: 熊乃げん骨
第十三章 田中、北の地に行くってよ

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第2話 田中、初探索《ファーストアタック》を提案する

 北海道に超大型ダンジョンが出現した――――

 俺がその情報を知ったのは、家で夕飯を食っている時だった。


「今度は北海道に新しいダンジョンか、最近また増えたな」


 テレビでやっているニュースを見ながら、俺はそう呟く。

 俺は堂島さんに頼まれ、新しく生まれたダンジョンの探索をよくしている。


 新しく生まれたダンジョンは中の情報が不明なため、ベテランの探索者じゃないと危険だ。

 今までは魔物対策省の人間がダンジョンの初探索ファーストアタックを行っていたが、最近は手が足りてないせいで俺の方によくその仕事が回ってくる。


 まあ新しいダンジョンの配信は視聴者の反応もいいしいいんだけどな。それに俺が頑張れば天月や凛の負担も減る。頑張るだけの価値はある。


「北海道! わらわ知っておるぞ! 確か寒いところだ!」

「おお、よく知ってるな」

「ふふん、わらわも日々成長しているのだ」


 そう言って胸を張るのはエルフの姫様、リリシアだ。

 異世界から来たリリシアは現在も引きこもり生活を絶賛満喫中だ。最近はダゴ助からネットゲームを教わり、熱心にプレイしているらしい。

 最初は配信でやるネタを増やすためにゲームを始めたらしいが、今ではすっかりハマり夢中になっているらしい。

 なんでもゲームの中ではみんな『姫扱い』してくれるから嬉しいらしい。本物の姫様なのに姫プレイで嬉しくなるとは、なんとも悲しい話だ。


「で、兄貴も行くんですかい? その北海道のダンジョンに」


 そう尋ねてきたのはリリシアと同じく異世界から来た魚人、ダゴ助だった。

 星乃は実家の方に行ってるし、天月と凛は仕事でいないので、食卓にはリリシアとダゴ助しかいない。


 考えれてみればこの部屋は異世界人率の方が高いのか。そんな場所世界中探してもここくらいだろうな。


「北海道か。行ったことないし行ってみてもいいかもな」


 中学を卒業してすぐに探索者になった俺は、遠くに旅行に行った記憶がない。修学旅行も行ったことないしな。

 仕事で遠くに行ったことはないのかと思うかもしれないが、強力なモンスターが出てくるダンジョンは東京周辺なことが多いので、ここら辺だけで仕事が事足りるのだ。


 地方にできた小規模のダンジョンを調査するような『美味しい仕事』は社畜の俺には回ってこなかった。俺だってたまにはそういう仕事をしたい。


「お、北海道に行くのか!? わらわも行くぞ! すうぷかれえ(・・・・・・)なるものを食べてみたい!」

「いやリリシアは行けないぞ? さすがにここを離れすぎたらマズイからな」

「なんじゃって!? いいではないか少しくらい!」


 抗議するリリシア。

 可哀想だけど政府の保護対象である彼女を北海道に連れて行くわけにはいかない。


 最近は軽めの外出くらいなら許されるようにはなってきたけど、県外はまだ無理だろう。


「だから少しじゃないんだって。地図じゃ分かりづらいかもしれないが、北海道は結構遠いんだぞ?」

「いい子にするから頼むタナカ! 少しだけ! 先っぽだけでよいから!」

「どこでそんな言葉覚えた!?」


 おそらく配信の視聴者だな?

 リリシアが純心なのをいいことに色々変なこと覚えさせやがって。ネットスラングばかり話す姫様なんて俺は嫌だぞ。異世界にいるであろう他のエルフにも申し訳ない。


「ま、姫さんのことは置いておいて。堂島の旦那に話は聞いておいた方がいいんじゃないですか兄貴」

「そうだな。魔物対策省も人手不足だし、困ってるなら手伝うとするか」


 ……と、そんな話をしながら俺は三人で食事をとったのだった。


◇ ◇ ◇


「ああ、その話か……」


 翌日。魔物対策省にある堂島さんの仕事部屋に行き、北海道のダンジョンについて尋ねると、意外なことに堂島さんはため息をついて面倒くさそうな表情を浮かべた。


 てっきり嬉々として仕事を頼んでくると思ったんだけど、どうしたんだろうか?

 なにか訳ありそうだな。


「いったいどうしたんですか? なにか問題でもあったんですか」

「ああ……実は北海道のダンジョンなんじゃが、その初探索ファーストアタックをやるのが魔対省うちじゃなくて他の会社ギルドになった」

「へえ、それは珍しいですね」


 初探索ファーストアタックは魔対省の人間がやることが多いが、ギルド所属の探索者がやることもある。

 だがそれはレアケースのはず。今は俺に依頼することもできるのに、どうしてギルドがやることになったんだ?


初探索ファーストアタックは危険だが、その分良い素材やお宝が手に入りやすい。今まで人の手が入ってない場所に入れるのだからな。だからギルドも初探索ファーストアタックをやりたがっておる。今までは魔対省うちがやっていたから我慢していたが……最近はお主にその多くを任せていた」

「え、つまり俺に任せていたから文句が出たってことですか?」

「そういうことじゃ。多くのギルドから文句が出たせいで、北海道のダンジョンはギルド主体でやることになってしもうた。知らん間にワシでももう止められないとこまで話は進んでしもうてるし……はあ、勝手な奴が多くて困ったもんじゃ」


 ダンジョンは資源の宝庫。様々な利権が絡み合っている。

 そういった面倒事が重なって今回の件は起きてしまったんだろう。大人の世界は実に面倒くさいな。


「というわけじゃ。本当なら田中に頼みたかったが、このダンジョンはワシの手を離れてしもうた。お主は家でゆっくりしとるといい」

「いえ、俺も行きますよ。他のギルドも参加していると言っても、俺が行った方が堂島さんも安心ですよね?」

「それはそうじゃが、魔対省うちから依頼は出せんのだぞ?」

「ええ分かってます。だから今回は俺の会社ギルドで参加します」


 最近は魔対省の仕事をやることが多い俺だけど、俺のギルドは別に魔対省とは関係ない独立した会社ギルドだ。

 ギルド主体のダンジョン探索にしても問題はなにもないはずだ。まあ多少の文句は言われるかもしれないけどな。


「……よいのか? お主は一人のダンジョン探索の方が楽じゃろうて」

「構いませんよ。これで犠牲者が出る方が嫌ですからね」

「恩に着る。田中が行ってくれるならワシも安心だ。なにか必要なものがあったら遠慮なく言ってくれ」


 こうして俺は他のギルドの探索者と一緒にダンジョンに潜ることになった。

 そういえば飛行機に乗るのは初めてかもしれないな。ステルス機の上には乗ったことがあるけど、まああれはノーカンだろ。


 修学旅行も経験したことがない俺は、少しだけワクワクした気持ちでその日を待つのだった。

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― 新着の感想 ―
重版おめでとうございます! 二巻が待ち遠しい
戦極姫さん、今は配信者になってるから間違っとらんと思うぞ
>本物の姫様なのに姫プレイで嬉しくなるとは、なんとも悲しい話だ 視聴者達は人の嫁(仮)でも姫扱いしてしまう更に悲しき存在…
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