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社畜剣聖、配信者になる 〜ブラックギルド会社員、うっかり会社用回線でS級モンスターを相手に無双するところを全国配信してしまう〜  作者: 熊乃げん骨
第十一章 田中、姫様とデートするってよ

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第4話 田中、デートを再開する

「ふう、ここまで来れば大丈夫か」


 動物園を急いで出た俺たちは、再び駅までやって来ていた。

 配信を止め、すぐに出発したけど駅に来るまでに俺たちを探している人を何人か見かけた。


 危ない危ない、認識阻害は完璧じゃないからああいう風に探されると見つかってしまう可能性があるんだ。

 そして一人に見つかり注目されると、他の人にも気づかれてしまう。早いとこ違う場所に行ったほうが良さそうだな。


「結構走ったけど大丈夫か?」

「ふふっ……ああ、大丈夫だ」


 俺が尋ねるとリリシアはおかしそうに笑い漏らす。

 いったいどうしたんだろうか。俺は首を傾げる。


「見たかタナカ。さっきの者たちわらわたちを探しておったぞ。いやあ危なかったな、まだ少しどきどきしているぞ」


 どうやら二人で人目を忍びながら逃げたことがツボに刺さってしまったようだ。

 俺にはいまいち分からないけど、まあ楽しんでくれたならいいか。


「そんなに楽しかったか?」

「ああ……楽しいな。故郷の聖樹国にいたころはこんな風に外で遊んだり、誰かから隠れて逃げたりなどしたことはなかったからな」


 リリシアはエルフの国のお姫様だ。

 エルフの姫の生活がどんな感じかは知らないけど、自由に動けはしないんだろう。なんせ仲間と一緒に魔王と戦わなくちゃいけなかったんだ、姫の責任は重いものだったんだろうな。


 突然この世界に来て更に大変な目にあっているんだ。せめて今だけは楽しんでくれると嬉しい。

 そのためだったらまあ、配信して騒ぎになって俺が始末書を数十枚書く羽目になるくらい、安いものか。

 社畜生活で始末書を書くのは慣れてるからな。寝ていても書けるってものだ。


「よし、じゃあ次のスポットに行くか」

「うむ! 楽しみだなあ!」


 こうして俺は楽しそうに長い耳をぴこぴこ動かす彼女と共に、東京観光を再開するのであった。


◇ ◇ ◇


 動物園から出て、再び電車に乗った俺たちは東京の名所を色々回った。

 東京のシンボルの赤いタワーや、情緒あふれる下町。渋谷や原宿では人混みに苦労しつつも名所を回ったり美味しいご飯やスイーツを食べたりした。


 それらを回る度にリリシアは本当に楽しそうに笑い、心から楽しんでいた。

 最初はデートなんて大変そうだと思っていたけど、ここまで楽しまれると連れてきてよかったと思ってしまう。


「タナカ! 次はどこへ行く!? わらわとしてはやっぱりこの絶品ふわふわパンケーキは外せないと思うのだが」

「次って……元気だな、疲れないのか?」


 今日はほぼ休憩無しで歩きっぱなしだ。一箇所に長居せず色んなところに行ってるので移動時間も多い。

 下手なダンジョン探索より疲れるぞ。


「情けないぞタナカ。わらわはまだまだいけるぞ!」

「これが若さか……眩しいな」

「お主もそれほど老けてないであろうが!」


 リリシアはビシッとツッコミを入れてくる。

 そう言ってくれるのはありがたいが、長い社畜人生で俺の魂は老けてしまった。星乃や凛を見ると若いなと思うことが多い。

 もう帰って寝たいという気持ちがないわけではないが、さすがにそれでは格好がつかない。たまのお出かけくらい格好つけるとしよう。


「分かったよ。じゃあそのなんとかパンケーキを食べに行くか」

「さすがタナカ、話が分かるな! ようし、共にくぞ!」


 リリシアは腕を組んでくると、楽しそうに歩き出す。

 なんだか今日一日でだいぶ距離が縮まった気がする。前から好意を向けてくれてはいたけど、それが大きくなり、更に少しも隠さなくなった感じだ。


「よし、こう撮れば……うむ! 盛れて撮れたな!」


 リリシアは時折写真を撮り、SNSに上げている。

 デートの様子を見たいというファンが多いとのことで、その写真を上げることは許可したのだ。さすがに生配信は駄目だけど、写真なら見つかることもないだろう。


 俺は見てないけどSNSは結構盛り上がっているみたいだ。リリシアが行った店にはファンが聖地巡礼しており繁盛しているみたいだ。リリシアに来てほしくてメッセージを送ってくる店も多いという。経済効果の高い姫様だ。


「なあタナカ、次はなにをしようか。夜になったら『いるみねーしょん』なるものも見てみた……む?」


 上機嫌に話していたリリシアが、不意に上を見ながら不思議そうな声を出す。

 それにつられて俺も上を見てみると、なんと上から大きななにかが落ちてきて……大きな音を立てながら地上に激突した。


「……っ!?」

「な、なんなのだ!?」


 辺りに衝撃が走り、粉塵が舞う。

 俺はとっさにリリシアの前に行き、彼女を守る。


 幸いそれほど大きな物は飛んでこなかったのでリリシアにも周りの通行人にも怪我をした者は見られない。

 だが上から落ちてきたものは……とんでもないものだった。


『グル……』

『ギャギャギャ!』


 灰色の体毛を持ったオオカミに、緑色の皮膚の小鬼。

 何度も見たことがあるから間違いない。あれはグレイウルフとゴブリンだ。


 ありえない。なんでモンスターが地上にいるんだ……!?


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