表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
社畜剣聖、配信者になる 〜ブラックギルド会社員、うっかり会社用回線でS級モンスターを相手に無双するところを全国配信してしまう〜  作者: 熊乃げん骨
第七章 田中、魔導研に行くってよ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

109/236

第12話 田中、問い詰める

「……は、はあ!? 会社を辞めたのか!?」


 突然のカミングアウトに俺は大声を出して驚く。

 こいつが勤めている会社は、そこそこ大手の優良企業のはずだ。黒犬ブラックドッグギルドとは違って残業もほとんどなく給料も良くて離職率も低い。

 それに足立には家庭がある。美人の奥さんと可愛らしい娘。絵に描いたようないい家庭だ。


 それなのに会社を辞めてしまうなんて、信じられない。


「頭のいいお前がそんなことをするなんて信じられない。一体どういうつもりだ? 奥さんはこのことを知っているのか?」

「おいおい、そんなおっかない顔をするなよ田中。考えなしにやったわけじゃないし、嫁にもちゃんと話してあるって」


 足立はそう言うとジョッキに入っている酒をグッと飲み干す。

 俺はそんな足立に更に詰め寄る。


「ならなんで俺に相談もせずに会社を辞めた。俺がそんなことをして喜ぶと思ったか?」

「思ってないから黙って辞めたんだろうが。反対することなんて分かりきってたからな」


 足立は悪びれず言う。

 確かに足立の言う通り「仕事を辞めようと思っている」なんて言われた日には猛反対しただろう。独り身ならまだしも足立には家族がいる。安定した暮らしを手放させることなんてできるはずがない。


「くく、どうせ俺の家族のことを心配してるんだろう? お前の考えていることは分かる。そこまで気にかけてくれるのは嬉しい、だけどな」


 足立は真剣な目を俺にまっすぐ向けながら言い放つ。


「俺は俺のケツくらい自分で拭ける。一度事業に失敗したくらいで家族を路頭に迷わせるようなことはしない。ちゃんと数年分の生活費はあるし、事業がコケそうになった時の保険は二重三重にかけてある」

「だとしても……お前がそこまでする必要はなかっただろう。別にお前は大金持ちになりたいタイプじゃない。今のままでも十分だったはずだ」

「まあな。だけどこれが俺がずっとやりたかったことなんだ。『夢』と言ってもいい。嫁もそれを知ってたから賛同してくれたんだ」

「足立、お前……」

「俺は博打をしない、つまりこれは勝てる勝負だと確信してるから俺は仕事を辞めたってわけだ。だから……お前はつまらないことを気にしてないで前だけ見てろ。俺に少しでも恩を感じてくれてるならな」


 足立はそう言ってにやっと笑みを浮かべる。

 ……はあ。ここまで言われては握った拳を解くしかない。顔の形が変わるまでぶん殴って辞職を撤回させようと思ってたんだけどな。


「少し喋りすぎたな。飲みすぎたみたいだ」


 足立は恥ずかしそうに鼻をかく。

 覚醒者であるお前がこれくらいで酔うわけないだろ、という野暮なツッコミは胸のうちにとどめておく。


「いいんだな? 本当に」

「しつけえよ社長。しっかり儲けさせてくれよな?」


 足立の言葉に、俺はジョッキ同士をぶつけることで返事をする。

 この馬鹿の家族が苦労しない為にも頑張らないとな。


「で? ギルドを作るってまずなにをするんだ?」

「面倒な手続きはもうこっちで済ませてある。後は事務所と……社員を増やすかどうするかだな。経理やらの手続き系は俺の知り合いに頼めるとして、雑事をしてくれる人が数人いると助かるんだけど」

「なるほど。それなら黒犬ブラックドッグギルドを辞めた連中に聞けば誰か捕まるかもしれないな。全員が再就職できてるわけじゃないと思うからな」


 あのギルドから解放されてすぐ働き始めるのは中々大変だろう。

 束の間の休息を味わっている元社員がいるはずだ。俺はソロで働いていたからあまり親しい人はいないけど、連絡先くらいなら知っているし向こうも話を聞いてくれるだろう。


 さっそく頭の中で誰から声をかけようかと考えていると、今まで黙っていた星乃が声を上げる。


「あ、あの!! その社員さんって……私がなっても、その、大丈夫でしょうか?」

「「……え?」」


 突然の提案に俺だけでなく足立も間の抜けた声を出す。

 まさかそんなことを言われるとは思わなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
わ〜い♪ 前話で書いた星乃が入る話、速攻実現しそう♪~(´ε`)
[一言] なんで足立が意外そうな声あげるんだよ、田中にベタ惚れの人間連れてきたら(永久)就職先に選ぶって分かり切ってんだろ
[気になる点] 足立さん、 【田中誠は社畜剣聖である】ってプリントされたタオルの販売はいつですか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ