桜花学園ゲーム同好会―邂逅
処女作になります。至らぬところ等あるかもしれませんが、ご了承下さい。
「部長~、刺激が足りないんだけど~。なんか新手のFPSとかないのかねぇ」
「はいはいそんな事言わない、明後日V-NET本社に行くなんてビッグイベントがあるんだから。ねぇ怜?」
「はは、、、優は昔からマイペースなやつだしほっとくが吉だよ。」
「まあまあ、お二人共、日曜はセカンドライフのリリース日だよ~?あと3日なんだから刺激なんてすぐ味わえるんだからね?」
「まあそれもそうだなぁ~事前情報でも見ながら妄想でもしてようかね」
――ゲーム衰退期
「日本はすでにゲームシーンを牽引しているとは思えない」
そう呼ばれて十年程、海外タイトルですらもマンネリ、人口爆発によるサーバーエラーの頻出により、ゲーム業界は衰退の一途を辿っていた。
そこに現れ、ハーフダイブ、つまり脳内での思考によってキャラクターを操作する技術の完成を促し、更には独自のハードコアMMORPGゲームsecondlifeをリリースし、大成功を遂げた『V-NET』。
それを皮切りに、ゲーム業界が息を吹き返し、世界中でVRゲームの開発が進む中、secondlifeは運営チームの意向とし、半年で正式サービスを終了、以降は次回作に向けたテスト用環境として断続的にオープンされることとなった。
そしてこの『secondlife』の続編がついに週末日曜に販売される。
それも最新技術をふんだんに使ったフルダイブVRMMORPGとして
そんな『V-NET』に訪問する事となったのは『桜花学園ゲーム同好会』、またの名を『サクラ・ブリューテ』と名乗る同好会員、部長の『鈴嶋 美月』を始めとした『時崎 怜』『更科 絵梨佳』『如月 優』の四人であった。
「失礼します!桜花学園から参りました!ゲーム同好会と申します!」
「いらっしゃい。私が代表取締役、古橋 樹だ。さあさ、どうぞみなさん、お座りください。」
「「「「失礼します。」」」」
「そんなにかしこまらないでいただければ幸いです。今日は皆様方に頼みがあってお呼びしましたので。」
「頼み...ですか?」
古橋さんと名乗る人物の不可思議な口ぶりに部長が問いかける。
「まあ長く話しても仕方ないでしょう。単刀直入に言いますね。私達と業務提携として、ゲームをプレイして欲しいのです。前提として、まず一つ、わが社が明日リリースする『Secondlife online』はただのゲームではありません。」
「へ?」「えっ?」「.....ほう?」
「と、いいますと....?」
部長が部を代表するように相槌を返す。
いくらなんでも突飛がすぎるだろう。まずただのゲーム以外に何があるというのか。
「皆さんには、『Secondlife』を通じて世界を守っていただきたいのです。といっても、すぐには納得がいかないでしょうし、私は少し席を外します。皆さんで一旦話し合ってみてください」
「そう..ですか...」
そう言って、彼は私達の後ろのドアから去っていった。
.........
部屋が静寂に包まれる。
静寂を割ったのは優だった。
「なぁ...世界を守るってどういうことだよ...そもそもなんでそんなことを俺達に頼むんだよ...」
「うん...そればっかりは古橋さんに後で聞いてみるしかなさそうだね」
「世界を守る....それって....私達がヒーローってこと!?そんなのやるしかないじゃん!」
「みんな一旦落ち着いて?絵梨佳に関しては...なんか平常運転って感じね...」
「それ、ディスってない?」
「とにかく、古橋さんが戻って来たときに聞くことを考えておきましょう?まずなぜ私達なのかってことは重要よね」
「異議なーし」
「あと、世界とゲームになんの関係があるのかってことも重要じゃねえか?」
「うん...確かにそうだね。」
「あとはそもそもどんなゲームになるのかってのも重要じゃない?前作があるとは言え分かんないと決めらんないからね~」
「うんうん、絵梨佳らしい意見ね。怜は何か意見ないかしら?」
「僕はもういいかな。みんなと概ね一緒だよ」
「わかった。じゃあ質問は私がまとめてしちゃうわね。それでいい?」
「「「おっけ~(いいよ~)」」」
程なくして、古橋さんは帰ってきて開口一番に問う。
「皆さん、話は終わりましたか?」
「はい。先にいくつか質問させていただいてもよろしいでしょうか?受けるかどうかはそれ次第です。」
真剣な顔で問いかける部長に呑まれ、古橋さんは無言で頷く。
「まず、ゲームと世界に何の関係があるのですか?」
「ふむ、確かにそこは疑問でしょう。ではまず、ゲーム世界について説明しましょう。私たちはゲーム世界、いえ、異世界を『イエソド』と呼んでいます。
まずイエソドの人口は約73億人。細かい数は省きますが、地球の総人口と等しくなっています。そしてこの世界はある種の並行世界。イエソドで人が一人死ねば、こちらでも対応する人が死にます。
そして向こうで大きな災害が起きれば、こちらの世界でもリンクして災害が起こります。そしてあちらの世界は今、未曾有の危機に晒されています。」
「もしかして、あの震災なんかも...」
「その通り。あのときはあちらの世界では大規模な魔力の氾濫。ゲームなどではよくある魔力爆発が起こりました。そして爆発はこちらでも...」
「いやいや、どうやってそんな関連性を見つけたんですか?」
食い気味に優が問う。もっともな質問だ。見つけるきっかけがない。
「すみません。その質問にはまだ...」
「わかりました。そこについては一旦おいておきましょう。他にも質問はありますから。なんで僕たちを指名したんですか?まず国なんかに相談することもできたと思うんですが。」
「そんなことをしても意味はない。軽くあしらわれて終わりだよ。」
僕たちは黙り込む。確かにそうだ。お硬い役所仕事の連中にゲームと世界に関わりがあるなんて受け入れられるはずがない。
「ちなみに、君たちを指名したのは学生プロゲーマーチームのネームバリューと学園長とのコネだよ。」
「「「「」」」」
一同黙り込む。
世界を守る人選にしてはいささか適当ではないか。何か隠しているのだろうか?
「なら、俺たちは何をすればいいんだよ。」
「私達の用意するアカウントを使ってゲームにアクセスし、アバターを通じてイエソドに干渉していただきます。つまり、通常通りゲームをプレイしただければ結構です。ただし、ある一点を除いては。」
「ある一点?」
「確実に"ユニーク種族"が割り当てられます。ユニーク種族は他の方にも割り当てられる可能性はありますが、ユニークの方々がクエスト発生ポイントに近づくと限定クエスト、つまり世界を守るためのクエストが直接発生します。それをクリアし、ワールドクエストを進めてください。一般プレイヤーとの協力をしていただいても結構です。むしろ、一般プレイヤーを扇動していただければ。」
「ありがとうございます。大体の内容はわかりましたので、あとは同好会員で相談させてください。」
「わかりました。私は部屋の外で待っていますので、終わったら呼んでください。」
そう言って古橋さんは外に出る。これから同好会員の話し合いだろう。とは言え、僕の意見はとっくに決まっている。
「社長、どうでしたか?『卵』達の様子は」
「あの様子では...7割がた受けるだろうね。もともとそのために撒いた種だ。安定して成長しているようだし、そうでなくては困るよ。まあ、あの子達には悪いことをすることになってしまうが...」
「そうですね。私達の世界...いや、全ての並行世界を守るためです。多少は仕方ありません。」
「ああ、そうだな」
「古橋さ~ん!決まりました!」
「呼ばれているようだね。では行ってくるよ。」
「言ってらっしゃいませ。」
「私達、桜花学園ゲーム同好会、いいえ、プロE-sportsチーム『サクラ・ブリューテ』は、『株式会社V-NET』|との業務提携を締結します」
「その答えを待っていたよ。皆さん。」
――こうして、僕たちの小説のような冒険譚が幕を開けた
「決まったよ。これからも世界を見届けよう。我が伴侶イシスよ。」
「もちろんです。それが私達の使命ですから。」
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カップリングは作ってみたいかも...?