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それを確かめるように走馬灯をくるくると回して記憶を辿った。
やっぱり間違ってはいない。あの日、「秋になったらここで会おうね。また美味しいものを持ってくるから」
と言って何度も頭を撫でてくれたのは向こうであった。
それをまだかまだかと僕は指折り数えて楽しみにしていたのに、あの娘は忘れてしまったのだろうか。
知り合いがまた通り過ぎて行った。一瞬だけ歩を止めてチラッとこっちを見たのが何だか凄くムカついた。以前から変に気取る癖がいけ好かない奴で、いくらこっちが牙を向いても涼しい顔でスルーしていくのも堪らなく嫌だ。ともあれ、今はそんなのに構ってる余裕なんて皆無だ。
さあ、本気でどうしようか。迎えに行こうにも家も知らないし、こんなことならあの時に聞いておけば良かったと後悔に押し潰されそうになりながら、それでもずっと待ち続けた。眠りの悪魔なんてこの世に居ないんじゃないかと思うほど眠気なんて全く感じやしない。