8話
【術系統】
火・水・風・雷・氷・地・光・闇
今日から学園生活だ。朝寮長室へ行くと凄い混んでいた。先輩達が多く入寮して来ていたからだ。前日から居た先輩達もいたがその比ではない。なんとか受け取り説明をしてもらってから部屋へ戻って来た。お昼を含めた5人分なので大きなバスケット2つだ。クレイとノワールは出掛けるそうなのでお弁当として包み、ゆったり朝食を食べてくつろぐ。
今日は初日ということもあり、3刻半までの早上がり。9刻からオリエンテーリングで後は授業が2つだけ。自由時間は邪魔にならないように見て回っても良いことになっている。
そろそろ時間になると制服を着て身だしなみチェックをし鞄を持つ。「いってらっしゃい。」と見送りを受けて寮を出た。
目的地は第一塔。寮から一番近い。むしろ食堂がある第二塔よりも近い。塔は事務所がある管理棟を含め7つ建っている。中庭を円状に描くように囲んでいて、正門左側に職員寮と技館・歓迎ホール、闘技場、訓練場がある。
エナトのEクラスは2階だ。少し勇気を持って中に入る。すでに10人以上いて、他も知らない同士なので様子を伺っている感じ。開いてるところに座って待つ。
クラスは1年で20あり、1クラスあたり50~60人の割り振りだ。 時間が経つと席も埋まってきて話し声でざわつくようになった。エナトも隣りに座った男の子と挨拶していた。
すると波がさぁーーっと引くように声が止んでいく。何だろうと思ってその原因を見つけると、背筋を伸ばして優雅に入ってきた子達がいる。誰かがそれを見てひそひそと名前を言っている。お金持ちというのではなく、おそらく彼らが貴族なのだろうと分かった。彼らはお互いに挨拶をしている。それを周りの平民は耳を傾けつつ大人しくしていた。
「(・・・、12歳?)」
大人びた話し方と社交的な笑顔は落ち着いていて、同年代とは思えなかった。雰囲気的にも話しかけずらそうだなと感じた。
そうこうしていると時間になり教師が入ってきた。がっしりした体躯は服ごしでも分かる。短髪の40代の男性だ。
前の机まで立つと、元気よく言った。
「 皆おはよう!今日から1年Eクラスの担任をする、ロバート・ジェイクンだ。ジェイ先生で構わん。担当科目は武術だ。よろしくっ。」
と生徒たちを見ながら挨拶し笑った。
そこから全員の自己紹介が始まった。名前と術系統、得物、目指しているもの、他。淡々と進み、エナトも前の方にいたので直ぐに順番がきた。問題なく終わると胸をなでおろし他の人のを聞いていった。術系統は1つから多くても5つだった。8つ全て持ってる人は珍しい、というか現状1人しかいないそうだ。平均としては2つから4つが多い。得物は持っていない者も一定数いたが、それを除くと剣が断トツ。将来についてはやはりギルドの団員は人気らしい。
自己紹介が終わると次はクラスリーダーと副リーダーを2人決めるのだが、これは立候補や推薦によりあっさり貴族から決まった。その後は一年間の行事予定や授業についての説明や配布物を貰って終わった。
最初の授業は歴史。国の歴史はもちろん地理についても学び、他領の有名な生産物も入る。いついつ誰々がというのは覚えるのが大変そうだが学ぶことも多いだろう。中でも生徒たちの目を覚まさせたのはギルド団員の話。いつ誰がこんな活躍をしたという話は食いついており、凄い集中力だった。
お昼を挟み次の授業は算術。基本的な計算は出来るので、かけ算割り算を組み合わせた応用から入った。そこから少数や分数、割合、体積、グラフや図形も今後学ぶ事になる。
今日の授業が終わったエナトは昼に引き続き学園内を見て回り、第二塔にある書物室へ来た。利用説明を聞いて本棚を回る。時々手に取っては戻し、その内何冊かは手元に置いた。
貸出は一週間、延期は借りなおせばいいが、最大1月間まで。学園の外への持ち出しは駄目。頼めば寮に届けてくれる。
借りた本を鞄に入れて次に行ったのは同じ塔の購買ブース。学園専用の買い物場所だ。文具を始め必要そうなものが揃えてある。飲食の販売ももちろんある。
購買ブースは定期的に店舗が入れ替わることがあり、飲食店は半年ごと、他は一年ごとにその機会があり、抜き打ちチェックもされている。選ぶ店も厳選される。店側はリサーチ出来て宣伝になるし、信用がついて箔がつく。学生は飽きることなく利用出来、良い店を知る事が出来る。
そこで少し買い物もして、食堂で明日分を注文し持ち帰り用を手に寮へ戻った。
「ただいまー。」
部屋の明かりが点いていたので帰って来ているのが分かる。
「お帰りなさい。思っていたより遅かったですね。もう夕飯は食べて来られたんですか?」
「ううん、見て回ってたら時間がたってた。」
「お、早速いろいろ荷物があるな。美味しそうな物も一緒にっ。」
「ふふ、当たり。美味しそうだから買ってきた。こっちは今から食べる用。」
「ありがとうございます。」
「おおっ、これは人気店ミルフィーの冷菓子っ。ならこれは保冷箱ですねっ。」
「うん、あまりもたないみたいで、保冷箱でも明日の朝までだって。」
「でしたら夕食後のデザートにしましょうか。」
「「賛成ー♪」」
早速ご飯の準備をし、エナトは着替えた。お互い今日の事を話し、そこから話が膨らんで楽しい時間を過ごす。
「あぁもうこんな時刻ですね。」
時計を見れば7刻半を回っている。
「もう?じゃあシャワーしてくるね。」
シャワーを済ませ寝着に着替えて歯を磨き、髪を乾かして整える。お水を一杯飲むとベットで少し本を読み就寝した。
食後は甘いもので〆たい派です!
次回は一週間をさらっと解説する感じかな。