6話
入学式です。
【学年のピンバッジの色】
1年 水色 (アクアマリン)
2年 赤 (スカーレット)
3年 黄色 (ライトイエロー)
4年 桃色 (コーラル)
5年 緑 (ビリジャン)
6年 紫 (バイオレット)
*学科を示すバッチも有り
模様替えの代金を払い、下見で来た時に話を詰めて追加注文が出たが、金1エナ足されただけだった。
その後も日は過ぎ、服の合わせでファムリーに出向いたり、出来た小物や鞄を受け取り、他の店で私服や日用品、部屋の装飾を買っていく。式まで半月を切るとエナトの模様替えも始まった。他の部屋の業者も入ってきているが、これからもっと増えるのだろう。荷物が増えたなと思っていたのだが、もっとすごい人はいて、あんなのどうやって入れるのかと見ていた。
エナトの部屋は朝から作業が始まり、お昼を挟んで何とか一日で終った。
「どう?思った通りかしら。今なら手直し出来るわよ。」
エナトは一通り見て回ると。
「うん、素敵に出来てます。いいですね。」
素直に満足。
「それは良かったわ。 それにしても妙な注文すると思ったら、まさか猫とホーク兼用だったとはねぇ。」
「えぇ、結果的にですけど、広い部屋で良かったです。」
リビングに追加した棚は穴だらけ、不思議に思っていたが猫の通路用だった。他にも椅子の背もたれに皮のカバーがしてあったり、天井の装飾のように長さや形、大きさの違う吊り輪が垂れ下がっているのはホーク用だ。
「じゃあこれにて終了ね。使い心地で直してほしいとか修繕が必要だったらいつでも言ってね。もちろん新規も受け付けるわよ。」
「ありがとうございます。その時はお願いします。お疲れ様でした。」
他に来ている職人にもお礼を言って手土産にお菓子を渡した。 その後の日々も準備は進み、制服と運動着が届いた。他の私物と一緒に運んだら凄い混んでいて、お隣さんには会えていないが量がとんでもなかった。
式の2日前。
「爺じと会えなくなるのは寂しいよ。」
「私もです。」
「気軽に遊びにも行けないね。」
「出会いも別れも同じくらいあるものです。多くを学びなされ。 それと、たまには上にも戻ってあげなされ。あちらも寂しがっておるだろうからの。」
「長期のお休みには会いに行くよ。上もー・・、その内ね。」
式の前日。 大きい鞄を持って入寮した。寮はまだバタついている。ほとんど身一つで来た者もいるし、すでに前から入寮している者、今日入寮して自分で荷物を運んでいる者も。
3階に上がるとぐんと静かになった。部屋に入って鞄を置くと一息つく。
「今日からここで暮らすんだなぁ。」
見回して改めて思う。 荷をほどいて収納すればやることはなくなる。ふと、上手くやっていけるか不安になる。でも自分で決めたことだ。楽しみたい。
当日。 制服に袖を通し身だしなみをチェック。昨日持ち込んだ食料を朝食にして今日の流れを確認する。式は10刻からで、その受付が9刻から。式の後は解散となるので保護者に会うなり帰るなり、学園を見学してもいいらしい。正し通路のみ。食堂は今日の夕5刻から利用可能で、飲食物や文具が販売されている購買ブースは明日からになる。
そろそろと思い寮を出た後は他の人の流れに乗って歓迎ホールに行く。ホールは技館の上にあり、地下にはプールがあるそうだ。
受付では今年入ったと分かるアクアマリンのピンバッジを付けてもらい、明日から行くクラスを教えられた。場所や明日のスケジュールなどが書かれた紙を渡され、中へ入る。椅子がズラ~~っと並んでおり、特に指定はないようだ。案内をしている先輩達が詰めて座るように言っている。エナトは座ると渡された紙を見て、読み終わると折りたたんでポッケにしまう。後は会場内を見ながら待った。
先輩達のピンバッジは緑と紫、エリナ・マージンは6学年で紫だったので、緑は5学年だろうと思われる。
時間がたつにつれ席は埋まり、式が始まった。新入生代表の感謝と誓いの挨拶から始まり、生徒会長の歓迎挨拶、その次は王族の第一王子だった。20くらいの若い青年だが、国を導く風格や人柄がうかがえた。
最後は学園長、お鬚と眼鏡を掛けた初老で、一人一人を見るように話す言葉やその目は、厳しさと優しさがある。穏やかながらもしっかりと話し、温かく迎える言葉を述べた。
「では最後に、わしから祝いの贈り物じゃ。」
そう言うと短い言葉を紡ぐ。するとふわっと風が起こり、上から光が差しひらひらと花弁が舞降ってきた。そして光がふわふわと綿毛のように散る。皆上を見上げ、手を延ばす者もいる。そして光は新入生達のピンバッジへと吸い込まれた。
「君たちの未来に祝福を。一人も欠けることなく旅立つ事を願っておる。」
入学式が終わるとエナトは門の外へ。シィメたちと合流し、ランチをとる。
「なかなか似合っておりますよ。」
「ありがとう。」
「何かあってもなくても連絡してくだされ。」
「うん、爺じもね。」
言葉少なながらも時間を過ごし、お別れの時がきた。
「そのようなお顔をされていては、次に会うまでが心配ですの。」
「うん・・。」
「こういう時こそ笑顔でいることです。また会えますからの。」
「はい。」
馬車の時間が来て、出発するのを見送った。
(エナト様、行きましょう。)
「 うん。」
帰りは食料を買って寮へと戻った。
(おぉ、聞いてたけど広いな。)
「クレイっ、ちゃんと足拭いてっ。」
(あぁそうでした。 おっ、テラス発見っ。日向ぼっこ出来そう。)
(キッチンは確かに簡易的ですね。エナト様は食堂でとられますか?)
「うん、始まったらそうなるかな?でもなるべく2人と一緒にとるよ。あ、2人は食堂に入れるのかな?」
(あぁー、多分部屋ですね。注文して持ち帰ることは出来ますよ。毎日保存食は流石に嫌です。)
「そっか。保冷箱は2つあるから定期的に貯めておかないとね。」
と買ってきた食料を入れていく。
(別に外で済ませてくるぞ?)
「ううん、雨の日だってあるしないよりいいよ。」
(掃除はどうなっているんですか?)
他の所も見てきたノワールが問う。
「あぁそれね、各階に道具が置いてあるんだって。洗濯もね、部屋と同じ番号の袋に入れてダスト?って言うとこに入れればいいみたい。シーツやカバーもリネン室のを使えるらしいよ。布団はテラスで干せばいいし。」
(そうですか。暇があるならと思ってましたが・・。)
ここに居るだけなのは退屈だ。
(まぁ仕事してればいいだろう?)
(そうですねぇ。 そう言うあなたはどうするんです?ここ3階ですよ?)
(ばか言うな、猫は木だって登れるんだぜ?オレならこのくらいするするっと行けるに決まってるだろ。後は窓をちょこっと開けてくれたらいい。)
(あぁ、登ってきそうですね。)
納得。するとエナトが思い出したように。
「あ、そうそう登ると言えばね、クレイ、この棚登れるようにしたんだよ。」
(へ?)
「ほらここ、ここから上に行けるの、やってみて。」
期待の笑顔で言われ、クレイはそこからひょいっと上がり、そこから更にひょいっ、ひょいっ、と横に下に上にと移動し、一番上までたどり着く。
(エナト、オレで遊んでる?)
「うん、楽しいかなぁと思って作ってもらったの。」
と嬉しそうに言う。
(むぅ・・。)
「ノワールはね、上から輪を吊るしてもらったんだ。止まり木にしてもいいし、輪くぐりしても楽しいかなぁって」
(おや・・。)
やってみての空気に飛んでみる。
(・・・、遊んでますね。)
すっかりペットの扱い。
その後はクラスがEになったことや、学園の事をいろいろ教えてもらった。なにしろクレイはここの卒園者だったりする。まだ10年も経っていないが懐かしいだろう。
この学園は6年制で、1・2年は基礎を学びクラスは変わらない。2年に一部入るが3・4年で選択授業に変わるうえ、学科別のクラスになる。5・6年は専門的な事を学び、研究・実践を本格的に行っていく。王都の学園は文武両道で、将来全く武と無縁でも2年までは共通で武技やマナエーテル術を習う。他にもいろいろ興味が持てるように習うことが出来る。志望比率は断然戦闘職が多く、7~8割を占める。貴族の子たちは家柄もあるが、一番人気は守衛団ギルドだ。後は騎士や兵士になる。その他の2~3割は文官や医療関係、生産職、商人だ。王立ということは、国の力になる人材を育てるということ。なのでそれなりの知識と護身が出来るくらいは求められる。
学園は王都以外にも2つあるうえ、庶民向けの学舎は他の街々にいくつもある。読み書きと簡単な計算だけなら神殿で習う事が出来るので、そもそも通わない者すらいる。つまりはその様な志を持つ者や箔付けで入学している。本来エナトも一応庶民であるし、職人志望なので学舎で良かったが、沢山学びたいという本人希望である。そして多くの貴族がいるのも学園の特徴だ。半分とは言わないが3分の1以上いる。大体王都に別邸や実家がある為通いが多い。次に多いのは富裕層の子供たち。こちらも3割近くいる。後は普通の平民だが同じくらいいるらしい。貴族は入って当たり前みたいな認識だが、きちんと合格ラインはあるそうだ。平民は当たって砕けろ精神でチャレンジするので倍率は相当である。落ちても学舎があるのでショックは少ない。逆に一番真剣なのが富裕層だ。貴族とこれほど交流出来る機会はない。将来に大きく関わるからだ。正直エナトは山で暮らす狩人という田舎者設定で、確かにそういう生活もしていたので嘘ではない。ただそういう子が学園に入学すると言うのはとても珍しいことだった。
次話も入学式の日の途中からになります。
設定をどこまで書けばよいのやら・・。ご都合設定ですみません。
今日もタレタレです。
またよろしくお願いいたします。