5話
お金の単位はエナです。
鉄・銅・銀・金・翠 の貨幣があり、十・百・千・万・千万の認識で。
結構ざっくりです。
「今日はこれからどうしますか?」
「そうだね、まずお店を決めないとかな。いろいろ買うものもありそうだけど下見しておきたい。」
入学も決まりいよいよこれからに期待する思いが膨らむ。そんな準備は楽しい。 早速必要な物のお店巡りが始まり、チラシを貰った店もそれとなく覗いてみる。
「んん~。 んん~~。」
「どうかされましたかの?」
「・・・。どこがいいかわからない・・。他の人はどうやって決めているのかなぁ?」
午後のティータイムにチラシを並べ悩んでいる。
(こういうのは直感ですって。店の雰囲気とか、印象とか。)
(金額の予算や扱っている物など、条件の合う所でしょうかね。)
「一番は信頼できる所でしょうな。これは話し合うしかありません。」
(勢いは大事だぞ。思い切って選ぶんだな。)
(いきなり一つではなく、良さそうな所を絞ってみては?比較してみないと選べないでしょうし、相手は商売人ですから交渉は上手くしないと足元を見られます。)
とアドバイスされるが。
「む、難しそう。。」
とテーブルに伏せる。
「ノワール、クレイ、ここは私たちが見本を見せた方が早いと思いますな。」
(よしっ、ここは一肌脱ぎますか。)
(エナト様のためなら喜んで。)
そうと決まれば行動だ。
=シィメの場合=
「実は孫の入学が決まりましての。いま店を探しておるのじゃが、こちらでもやっておると伺ってな。如何ほどで請け負っているんじゃろうか?」
この店の店主はガタイのいい人だ。力持ちの印象。
「あぁそうかい。うちは大体金30からだぜ。」
「ほう。私も昔お願いしたことがあったが、高くなったのぅ。」
「そりゃあ爺さんくらいの齢で昔っつったらなぁ。うちは力仕事が腕の見せ所だから人件費が高いんだよ。その代わり家具はしっかりしてるし、仕事も一日で終わらせられる早さも売りだ。」
「ほっほっ、それは頼もしいの。」
「どうだい?」
「そうじゃのぅ、一考してみようかの。孫とも話し合ってみます。」
「そうかい。まぁ決めるなら早い方が良いぜ。うちは駆け込んで来る奴が毎年いるんでね。」
「そうさせてもらおう。」
=クレイの場合=
「オレの知り合いの身内がさぁ、今店探しててさ、それでオレもそれ手伝ってるんだけどね。 安くなんない?」
いきなり値切りで店員も戸惑う。
「は?はぁ。。えーその、お知り合いのお身内様のご要望は、どの様なものなのでしょうか。」
「んーとだな、日は急いでなくてぇ、別に一日でなくていいんだけど、経費は出来れば抑えたいって言ってたな。で、ここが一番安いってチラシに書いてあったらしい。」
そこで店員も内容が分かったようだ。
「あぁ、あのチラシをご覧になったのですか。えぇ、当店はお客様に合わせた提案を行っておりまして、荷をお運びするだけでしたら金10から20、最低限の物をセットにしたのが必要でしたら金15から、お客様が選んだ物を手配するところからとなりますと、金25から30以上と少々値が張りますね。正しこれは20日までのお得期間中の話になります。」
「へぇ、なるほどな。考えてるねぇ。」
感心感心。
「いかがいたしましょう。」
「うんうん、分かった。まだ他にも回ってみたいから候補ってことで持ち帰るよ。もし決まったらその時はよろしくな。」
「お待ちしております。」
=ノワールの場合=
「少々よろしいでしょうか。私の甥っ子がこの度学園に入る事になりまして。部屋を少し替えるために店を当たっております。」
この店は少し高級路線が伺える。
「それはそれは、おめでとうございます。当店はお客様に満足して頂ける品揃えでございますよ。アンティークから一点物、お部屋の内装もランプから壁から絨毯、装飾も全て替える事が出来ます。後半になるとどこも埋まり断られる所が多く、値段も上がる中で当店はお式3日前まで断ることがないようにしておりますし、値段も一律始めの設定のままでございます。」
「ふむ。 ちなみにこちらでの相場はおいくらですか?」
「そうですね、前後はいたしますが金50かと。お選びになった商品により差がでますので。」
「こちらの商品だけで私物の運搬はなしですか?」
「ご要望とあればもちろお受けいたしております。量によってはその分勉強させて頂きます。」
「そうですか。ーー」
「いかがでしょう?」
店内を見ながら考えて。
「そうですね。 ありがとうございます。とても良いお店だと思うのですが、甥っ子には少し敷居が高いかもしれません。いづれ相応しいと思えばその時参る事に致します。どうもお時間をとってしまい申し訳ありませんね。」
「いえいえ、またいつでもいらしてください。是非今度は甥御様とご一緒に。」
「えぇ、失礼いたしました。」
3人が行ったどの店も売りが異なり、多いからこその商売の仕方なのだと知った。
翌日。エナトは一枚のチラシを手に向かう。そこは小さな職人街と呼ばれる地区だ。
「んー、案内だとここら辺なんだけどぉ・・。」
「何と言う名の店ですかの?」
「マナの木だよ。」
そう言うと。
(あ。・・・あれですかね。)
(え?・・・ここですか?)
「・・・、やっておるのかの?」
確かにあった。
「こ、ここだよきっと。看板あるし。。」
ボロボロですけど。
(いやぁ、やる気が見えない店?)
(人はいる気配はしますよ。)
なんとも不安。
「よしっ、行ってきます。」
「すぐ近くにおりますからの。」
建付けの悪いドアを開けてうす暗い中へ入る。
「あのー、すみません。」
声をかけるが誰も来ない。ベルもない。もう少し大きな声で呼びかける。
「あのっ、すみませんっ、誰かいらっしゃいませんかっ?」
すると奥の方から音がして、やがて一人の男性が出て来た。
「・・・・・・誰だ?」
無愛想に聞かれる。
「あの、どうも、チラシを貰って来た者です。ここの店を、その、紹介されまして。。」
「あぁ・・。 少し、待て。」
少しムスッとした顔で奥へ引っ込む。大丈夫だろうかとそのまま待っていると、男性が戻って来た。
「すまんが、娘は今、取り込み中で、相手ができないそうだ。」
< ドドドドドドドドド・・>
「?」
何やら奥から音が・・?
「なので帰って、出直し・・っ!?」
「こんのっ、バカ親ーーーっっ!!!」
「っ!?」
途中から音がしたと思ったら、奥から女の子がいきなり飛び蹴りをするという、衝撃の光景を見た。
「お客様が来たならそう言ってっ!そしてなに帰そうとしてるのよーーっ!」
「・・・いや、そう言ったんだが・・。」
「聞き取れなかったのよっ!」
するとそこにもう一人奥から来て。
「師匠、お嬢さん。」
「何っ?」
「?」
「 お茶、出しましょうか?」
と苦笑いして言う。そこで女の子はハッと我に返り、バッ!とエナトを見た。
「っ!」
そして真面目な顔でじ~っと見て、一歩、一歩近づいて来る。
「・・・??」
体が引き気味になりつつ戸惑い、目の前まで来ると。
「っ!?」
がしっと肩をつかまれた。
「(えぇっ?)」
「よくここまで来て下さいましたっ。」
そして両手をぎゅっと握る。
「逃がしませんっ。」
「えっ?」
堂々と不穏な事を言われた。ちょっと混乱。そこでいつの間にかギャラリーが6人増えていて、その内の一人が咳払いをする。
「! あっ、すみませんっ。つい本音が。」
自らも咳払いをし一歩下がる。
気を取り直し。
「先程は父が失礼を、お見苦しいところをお見せいたしました。私ここの店主の娘で看板娘のアリナ・エターシャと申します。本日はどの様な要件で?」
「あー、はい。 あの、これで来たのですが・・。」
とチラシを見せる。
「まぁっ!ありがとうございます!さぁさぁ、こんな所ではなんですしっ、狭い所ですが奥に部屋がありますので、存分にお話合いをしましょうっ。さぁさぁっ。」
と手を引っ張られる。
「サキチっお茶をっ、お茶を沢山お持ちしなさいっ。」
「えっ?あのっあのぉー。」
どうぞどうぞと中へ連行・・いや案内される。その時の周りの目は憐れみがこもっていたような気がする。。
「ささ、粗茶ですがどうぞ。」
「あ、どうも。」
部屋には先程いた全員がいる。その中でテーブルを囲んでいるのはエナトと店主、娘、先程咳払いしていた少年。
「改めて、この度は当店マナの木へお越しいただきありがとうございます。」
「いえ。」
「当店の売りはどこよりも親切丁寧、そして真面目な仕事、信頼第一。相談や補修もばっちり受けております。 早速ですがどの様なお部屋をご希望ですか?もちろん荷物の運搬も手配させていただきます。」
「・・・えとぉ。。」
すっかり相手のペースにのまれてしまったが、自分の考えや要望を伝えるために静かに深呼吸する。
「あの。」
「はい。」
「紙とペンを」
「はい。・・・、はい?」
意味が伝わらなかったらしい。
「その、上手く説明できないので、部屋の見取図を描いて分かってもらえないだろうかと・・。」
「・・・。 直ぐに紙とペンをここにっ!」
持って来させる。
そこからは同じ学生の分かる者で見取図を描いて、どこに何が欲しいかを言っていく。実際には現場に行ってサイズを測り、設計に関わる事を決めるそうなので、3日後にお願いした。
「分かりました。ではその時にまた・・ーーー!・・あの、話をまとめていてなんですけど、・・うちで任せて頂けると言うことでいいんでしょうか?・・」
いつの間にか仕事の段取りになっていた事に本人が気付く。
「えぇ、引き受けてくれる所を探してたんですが?」
「あ・・・、ありがとうございます!代金も勉強させて頂きますのでよろしくお願いします!」
「こちらこそよろしくお願いします。良心的なお値段で。」
「お任せくださいっ。」
それから唸りながら店主と話し計算して。
「 はい。 金20エナでいかがでしょう。」
「 はい、ではそれで。」
すんなり了承。
「・・え?いいんですか?」
「え?大丈夫ですよ?」
「いえあの、もっとこう、食い下がるとか?」
交渉のこの字もない。
「? いえ、妥当な料金では?他の店も回りましたが、金20エナは平均かちょっと下、いい値だと思います。」
「う。そ、そうですか。」
代金は近日中に払う事になり、契約書にサインをした。
仕事の話が終わると空気もほっと一区切り。そこからは先輩と後輩の会話になり、名前も教えてもらった。チラシを渡してくれたクリス先輩もそこにいた。アリナ先輩は生産職希望と聞くと歓迎された。
「ではそろそろ失礼します。外に祖父が待っているので。」
「そう、お爺さんが外にいらっ・・・・・・、なんですってーーーっ!!」
「っ!」
「何でもっと早く言わないのぉっ!」
と叫んで外へ駆け出す。 最初から最後までドタバタ感が出たが、店も決まって一安心。
ずっと書き続けるのって大変なんだね。
他の小説読まないと気力が湧かないなんて知らなかった。。
一話ごとに7時間以上かけてるってどうなんだろうか?
次はいつになるやら。(-_-)
またよろしくお願いいたします。