詩版「ボトルレター」
そこはどんな景色ですか
そこには何がありますか
そこはどんな場所ですか
ひろってくれたひとありがとう
手の平大の ノートの切れ端
そのまま半ズボンのポケットに詰めた
灯台下の坂道にはその塔の大きな影
少年は吹き上がる潮風を受け 駆け下りた
たった一つの角
そこを曲がると
目の前に広がる真っ白な砂 どこまでも遠い青
パタパタと砂を蹴る
白く小さな砂煙 跳ねあがる
右手に抱えた淡い緑の透明ガラス
リボンシトロン
5月の人肌の砂
瓶にサラサラと詰めた 握った分だけ
砂がついた掌
そのままポケットにつっこむ
取り出された切れ端のメモ
クルクル巻かれ
ガラスの瓶口に押し込まれた
栓は
父さんの飲んだ ワインの空きビンのコルク
白浜の先の岩場
引き潮の残した溜水は小さな水族館
ウミウシ いそぎんちゃく 銀と黒の小魚
少年はすべらぬよう
両手を広げゆっくり進む
岩の沖
水平線も掻き消したブルー
空と海は繋がる
今 全てを独り占め
手から放たれたガラス瓶 揺れる海光に落ちた
打ちつける白波 引いていく泡波
波間を上下
見えたり隠れたり
沖へ沖へと
夢は広がる
少年はまた手を広げ
ひろってくれたひと ありがとう
どこまでもどこまでも
遠く
果てしなくブルー
※本作品は
「短編版・ボトルレター」として2021年4月12日に投稿してございます。
宜しかったら是非ご覧になって下さい