春
「冬眠から覚めたクマのようだな」と、僕のランニングアプリの先生がまた三分おきに言ってくる。
ある疫病が世界中に蔓延し、あれよこれよと僕の住むこの街もテレビで見るソレと同じになった。
街の様子がすっかり変わった。
「これが終わったら一緒にビールを飲みに行こうぜ」とまた、先生がアメリカンなアクセントで僕を後押しする。
いやそれじゃ意味ないじゃん、なんてツッコミを入れつつもう少しペースを上げてみた。
運行数がぐっと減ったトラムを追い越し、停止ボタンを押した。
僕のTシャツを後ろからそっと、朝の風がめくりあげる。
僕はくしゃみをした。