#はったり
#はったり
「買ってきたぞ!」
フニャールがいきなり目の前に現れたが、それは、アリサが魔法の首輪を手に入れたフニャールをファルフのデパートからパラの村にテレポートさせたからだ。
「キーホルダーもあるか?」
「勿論」
これで俺のお金は半分以上無くなってしまったが、俺は、それを持って、リースに駆け寄る。
「いくら勇者様のお願いでもそれは無理だな」
だが、リースの交渉は上手くいっていなかった。
「どうしてですか?」
「俺が猫人族が嫌いだからだ!」
「そんな……。お金を出すって言ってもですか?」
「駄目だったら駄目だ!」
「お願いします! 真実の日には、あの子が必要なんです!」
「真実の日か……そう言われてもねー……」
真実の日を交渉に出すと、大抵の人が参るらしいが、残念ながら、今回は上手くいかなそうだ。
「それなら仕方ないな」
そこでもう一押ししようと俺がリースの前に出て、交渉役を代わる。
「な、何が? 仕方ないんだ?」
するとその村人は俺の圧に一瞬怯む。
「お前を斬る!」
「はぁ? そ、そんな事が許されると思ってるのか?」
「ああ。俺は勇者パーティーだからな。大抵の事は、恩赦が与えられる。まぁ、理由にもよるが、長くても一か月で釈放されるだろうな?」
そんな事俺が分かる訳ない。
でも、はったりは交渉において、大事なのだ。
「だが、ここであんたがあの子を譲ってくれるって言うなら百万エンド出そう」
「……」
「どうする?」
「うーん……」
「やはり斬るしかないか……?」
「わ、分かったよ。それで譲るよ。でも、この村の中で解放するなよ?」
「ああ」
そこで俺たちは、村の外に檻を運ぶ。
「シャー!」
だが、ムロはまだ気が立っていた。
今出すのは危険だろうか?
「ごめん」
そんな中、俺は、リースに謝った。
「何が?」
「いや、勝手に百万エンド使って……」
「いいのよ。どうしてもこの子を助けたかったんでしょ?」
「ああ」
「それに私もこの子が死ぬところは見たくないからね?」
「……」
でも、これでフレリアさんから預かった旅路金は、すっからかんである。
「でも、どうする? この子完全に警戒してるよ?」
アリサが俺の背中に隠れながら口を開く。
「いや、問題ない」
だが、俺は、無造作に檻を開けたのだ。




