#保健所
#保健所
「誰か―アイツを捕まえてくれー」
俺たちがパラの村でトイレから出てくると、そこには、屋根の上に幼い女の子が一人いた。
手には、このパラの名物のハンバーガーを抱えているが、どうやらその子はそれをくすねた事で、村の人間に追いかけまわされてる様だ。
「シャー!」
女の子は、徐々に迫ってくる人間を猫の様に威嚇するが、このままだと捕まるのは時間の問題だろう。
「やっと追い詰めたぞ!」
だが、次の瞬間、逃げ場を失ったその女の子は、かなり距離のある屋根に飛び移ろうとして、そのまま真っ逆さま。
地面に落下した衝撃で、一瞬気を失ったところを、御用になったのだ。
「ムロ悪くない!」
ムロは檻の中で暴れていた。
「これだから猫人族は嫌いなんだよ!」
「何でこんな所に猫人族がいるのかね?」
「そんな事より、まだ保健所の人間は消毒してるのか! さっさと連れてけよ!」
「この疫病神が!」
ムロはただの人間ではない様で、頭の上に猫の耳の様な物、おしりに猫の尻尾の様な物があった。
「保健所ってどういう事だ?」
俺は、その言葉に嫌な印象を受けたので、フニャールに尋ねる。
「そんな事も知らないのかい? あんた相変わらずとぼけてるね? 猫人族はね、山奥で暮らしていて、滅多に人里には下りてこないんだが、たまに町に出没して、人に危害を加えたり、危険な病気を持っていたりする事があるんだ。だから、ほとんどの場合、人身被害を回避するためや、病気が伝染する可能性を考えて、見つけたら保健所に連れていくのが普通さ」
「へぇー。連れていかれた後はどうなるんだ?」
「そんなの知らないよ。処分されるんじゃないか?」
「処分? 殺されるって事か?」
俺は驚きで声が裏返る。
「あまりにひどい場合はね?」
みんな本気で言っているのだろうか?
いくら危険とは言え、まだ子供だぞ?
「ほとんどの場合って言ったな?」
「ああ」
「それ以外の場合は、どんな場合だ?」
「例えば……、人に危害を加えれない様に魔法の首輪を装着させ、さらに伝染病を持ってない事を証明出来るキーホルダーを付け、その上、Bクラス以上の冒険者が責任もって、飼育するなら……、でも、そんな事聞いてどうするんだ?」
「リース!」
俺は、そんなフニャールの言葉を遮って、すぐにリースに声を掛ける。
「リースならあの子を救えないか?」
「え?」
「フニャール? Bクラス以上って事は、勇者でもいいんだろ?」
「勿論。でも、まさかアイツをペットにする気か? 止めておいた方が良いと思うぜ? 猫人族は滅多に人に懐かないからな?」
「そんなの関係ない! 俺は、ネコ派なんだ!」
「はぁ?」
フニャールは頭を抱えていたが、リースは力強く頷く。
「分かったわ。俊彦がそんなに言うなら頑張ってみるわ」
そう言うと、リースは、ムロを捕えた村人の所に駆け寄った。




