#ルーシー
#ルーシー
「何買ったの?」
デパートでリースがダックスの様な表情で後ろから俺に声を掛ける。
「いや……」
俺は、この異世界に来て、服は、リースの所にある奴を借りていたが、靴はぼろいまんまだった。
それで新しい靴を買ったのだ。
「似合ってるわよ?」
俺が履いてみせると、リースが褒めてくれた。
「アタイもセールだったから奮発しちゃったよ」
フニャールの右手にも、アイアンナックルが装着されていたが、家族とご馳走を食べる話はどうなったのだろう?
いくらアイアンナックルが他の武器に比べて、安いとはいえ、十二万五千エンドで買えるかは、俺も知らない。
「最後の一つだったから九割引きにしてもらったよ」
まぁ、フニャールが満足そうだから何でもいいけど。
「……」
アリサは、メモ帳の代わりに赤い手帳を買っていたが、それを見る度に、満面の笑みを見せる。
それはまるで子供の様な無垢な顔だ。
「リースは、何も買わないのか?」
「私は、お母様に花を買ったわ」
「そっか……。喜ぶといいな」
「うん」
相変わらずリースの性格は、春風の様で、俺たちは爽やかな気持ちのまま、屋敷に戻る事に。
屋敷に着くと、俺は、必要のない物を部屋に置いて、夕食の準備を手伝うためにキッチンに向かった。
「ねぇねぇ?」
するとその途中で俺より三つくらい年下な西洋のお人形さんみたいな女の子と遭遇する。
「君は……?」
「私は、ルーシー。それよりお兄ちゃんが持っているそれなぁに?」
「これは……」
それは先ほどのデパートで買ったもう一つの靴だった。
何でそんな物を持ち歩いているかと言うと、実は、これは自分の靴ではなく、夕食後に日頃の感謝を込めて、リースにプレゼントしようと思ってこっそり買った靴なのだ。
「これは……リースへのプレゼントさ」
「ふーん。何でプレゼントするの?」
「え?」
「お兄ちゃんはお姉ちゃんの事が好きなの?」
「好きだよ」
「じゃあ、結婚するの?」
「いや、そう言う訳じゃないよ。人として好きって事さ」
「どう違うの?」
「きっと、同じ様に見えて、全く別の感情だね」
「ならルーシーの事も好き?」
「うーん。特に嫌いな理由はないかな……」
俺は咄嗟に苦笑いする。
「ならそれ頂戴!」
するとルーシーは突然、それをぶんどったのだ。
「ち、ちょ!」
そのまま俺は、追いかけたが、廊下を曲がった所で見失ってしまった。




