#初
#初
「十七番の方」
銀行の人が俺の番号を呼ぶ。
すると俺たちは、窓口に向かった。
「今日はどの様なご用件で?」
「預金通帳を作りたいんですが……」
「そうしたらこの用紙に必要事項を記入してください」
そう窓口が差し出した用紙を、俺は、リースに教えてもらいながら、なんとか埋める。
「これでいいですか……?」
「はい。オーケーです。それでは、身分証明書をお出しください」
そして、この前のクエストの時作った、冒険者カードを提示する。
「風間俊彦様ですね? 少々お待ちください」
カタカタカタ。
すると窓口の人がパソコンの様な機器をいじる。
「……」
俺は、初めての体験に少し困惑したが、四、五分すると、俺の目の前に、一枚の銀色のカードと通帳が置かれた。
「これで手続きは完了ですね。お金は、現金自動預け払い機があれば、どこでも出し入れ出来ますし、大抵の店ならそのカードで直接買い物もできますよ」
「そうですか」
「それでは、またのご利用お待ちしております」
「……」
そして、俺の初体験は無事終わったのだ。
「あーあ、アタイもキャッシュレスカード作ろうかな?」
フニャールが心にもない事を口にする。
「でも、アタイは現金の方が好きなんだよね?」
「なら今のままでいいんじゃないか?」
それを俺は、適当にあしらう。
「やっぱそうだよねー。でもねー」
一体フニャールは何て言ってほしいのだろう?
「それより早速使ってみましょうよ?」
するとリースがデパートの入り口で立ち止まる。
「でもなー、何を買おう?」
「何か欲しいものは無いの?」
「そう言えば……」
そう言えば、俺には前から欲しい物があった事を思い出した。




