#張本人
#張本人
「あれー? 金虫のフニャールじゃねーか?」
俺たちが冒険者ギルドに着くと、早速、嫌な奴の顔が視界に入る。
Cクラスのガルダーだ。
「な、何だよ?」
フニャールが毛嫌いした顔をする。
「やっぱ捕まっちまったか? フニャール? で、今回は、どんな罰を受けるんだ?」
どうやらガルダーはフニャールが報酬をねこばばした話をしてる様で、その件で、冒険者ギルドに連れて来られたと誤解してる様だ。
騙したり、はめたり、規約を破った人は、冒険者ギルドが利用禁止などの、ペナルティーを与えることがあるらしい。
「まさか? またクラスが下がるのか? これだから金虫のフニャールは……一体いつになったら俺様と同じ、Cクラスになるんだろうな? ガハハハハハ!」
「うぬぬぬ……」
フニャールが悔しい顔をするが、Dクラスじゃ、何も言い返せない。
「いや――」
それを俺が弁明しようとしたらその背後で雷が落ちた。
「君だって、まだCクラスじゃないか?」
俺たちが、振り向くと、そこにはBクラスのグールズがいたのだ。
「何だと……? お前、最近Bクラスになったからって調子に乗ってるんじゃないか?」
「調子に乗っちゃ悪いのか? Cクラス? 俺たちは、もうお前の与太話は聞き飽きたんだよ?」
するとなぜか鬼の形相のグールズの後ろに、この前、大樹に捕らえられていた連中がずらりと並ぶ。
その数五人。
「な、何だよ……!」
さすがのガルダーもその数の圧には、怯む。
「とにかく! これ以上、フニャールをからかうなら俺たちが黙ってないぞ!」
「今日の所はこの辺にしておいてやる……!」
そう言うと、ガルダーは渋々退散する。
「グールズ? 何で?」
フニャールは驚いた顔をしている。
それも当然だ。
グールズは、あんなにフニャールを馬鹿にしていた張本人なのだから。
「か、勘違いするなよ! 俺は、ただ……アイツが前々から嫌いだっただけだ!」
「そっか、すまんな……」
その時、リースが、肘でフニャールを突っつく。
「そこはすまんなじゃないわ……」
「あっ!」
するとフニャールの顔が満面の笑顔に変わる。
「ありがとうな! グールズ!」
そこでグールズは、照れを隠した様な顔をする。
「感謝してるのは俺の方だよ……。マジで死ぬところだったんだからな……」
そうぼそりと呟くと、グールズは、続けた。
「今まで、意地悪して悪かったな……。それだけ言っておきたかったんだ……」
それは、まるで、この暑さで溶けだした氷の様な出来事だった。
外は、快晴で、今日も暑くなりそうだ。
そのまま俺たちは、受付に向かった。




