#8.出逢い
#8.出逢い
敵のリーダーはすぐに俺が無傷だと分かるが、懲りずに何度も同じ攻撃をする。
だが、結果は同じだった。
「そうか! コイツ! 噂のアンドロイドなんだな!」
「どど、どうします?」
部下はかなり動揺している。
「うーん……」
リーダーは俺の顔色を伺うが、手が無いのはこちらも同じだった。
そこで俺ははったりをかます。
「俺は三下でも手加減しねーぜ?」
「う、うーん……」
すると敵のリーダーのさっきまで自信に満ちていた顔つきが変わる。
「てて、撤退だ!」
そう叫ぶと、リーダーは間抜けな事にあっさり尻尾を巻いて逃げ出したのだ。
「ボス! 待ってくださいよ!」
その逃げ足は速く、部下たちもリーダーを追う様に必死に逃げていく。
なんだか知らないが俺はとにかく危機を脱したのである。
「……」
そこに襲われていた馬車の乗客が降りてきた。
「どこのどなたか存じませんが助かりました。まさか盗賊『赤犬』が手も足も出ず、逃げていくとは……お強いんですね?」
それはとても綺麗な、まるで絵画の様な長い赤毛のお嬢さんだった。
「いや、俺も何が何だか……それよりここはどこですか?」
「ここですか?」
「はい」
「ここはファルフの西の森ですわ」
「ファルフ? そうですか……ありがとう」
やはり日本ではない様だ。
でもなんだか天国でもないみたいだし、まさか俺は異世界にでも来てしまったのだろうか?
「もしかして道に迷われたんですか? それなら助けて頂いたお礼をさせてください」
「でも俺、何もしてないですよ?」
「そんな事はございません。あなたのおかげで妹の薬を取られずに済みました。何もないですが私の御屋敷にご案内します」
「……」
「どうかしましたか? そう言えばまだ名前を名乗っていませんでしたね? 私の名前はリース」
「俺は俊彦……」
「としひこ? 変わった名前ですね? では、とりあえず馬車へ」
俺はまだリースの事を完全に信用した訳ではなかったが、この世界の情報も欲しかったし、なんとなく殺人鬼には見えなかったので、とりあえず同行する事にする。
でも、馬がいないのにどうやって発進するのだろう?
俺が首を傾げていると、驚く事に馬車はひとりでに自動車の様に動き出したのだ。