#平静
#平静
「昨日……フニャールとキスしてたでしょ?」
「それは……」
それは間違っていない。
リースは、その現場を目撃していたのだ。
でも……何でそれが俺たちがキスする事に繋がるのだろう?
一体何を考えているのか?
それは出来の悪い俺の頭じゃ分からなかったが、リースは俺の方に顔を突き出して、目を閉じる。
その彫刻の様な顔に、俺は、ドキドキした。
そして、俺もゆっくり顔を近づける……。
「……」
だが、リースは小刻みに震えていた。
きっと初めてなのだろう。
「こんなの良くないよ……」
そこで俺は、リースの体を優しく引き離す。
「やっぱしてくれないんだね?」
するとリースはちょっと悲しそうな顔をした。
「ごめん……。でも、何だかよく分からないけど、こんなの間違ってる気がするんだ」
でも、この気持ちは何だろう?
それを言葉で完璧に説明する事は難しいが、例えるなら急に雨が降ってきた時の様な感じだ。
当然、俺に傘はないが、だが、リースは……。
「そうだよね……。変な事言ってごめんね? 私、どうしちゃったのかしら? き、気にしないで!」
急にリースがあたふたする。
その時、突然、雷が鳴った気がした。
「あんたら何してるの?」
俺たちが振り向くとそこには大きなあくびをしているフニャールが起きていたのだ。
「な、何も!」
俺たちは咄嗟に平静を装ったが、フニャールの疑いの目は晴れなかった。




