#開花
#開花
「た、す、け、て、く、れ……」
魔物化した大樹に捕まっている冒険者がうめき声を上げている。
だが、俺たちは、攻めあぐねていた。
無数のツタが厄介だし、何より息が続かない。
その大樹は、瘴気を出し続けているのだ。
それに……。
「俺たちの攻撃じゃ、きっとダメージを与えられない!」
恐らく、俺の剣じゃ、かすり傷を付けるのがやっとだろう。
俺は、言わずもがな、瘴気さえ吸い込まなければダメージを受ける心配はないが、いくら体が頑丈でも捕まったら毒には勝てない。
大樹に捕まっている冒険者が辛うじて生きている所を見ると、その瘴気は、体の動きを封じるだけで、死ぬ事は無さそうだが、その大樹は、少しづつその冒険者の生気を吸っている様だ。
「応援を呼ぼう! そうすれば数で何とかなるかもしれない!」
俺は、それしか思いつかなかった。
「駄目だ!」
それをフニャールが反対する。
「どうして!」
「大樹のてっぺんを見て!」
リースの言葉に俺は、空を見上げた。
するとそこには大樹のつぼみが沢山あったのだ。
「あれがどうしたって言うんだよ?」
「あの大きさだと、きっと夜明けには花を開く」
「だから?」
「そしたらあの大樹の花粉が飛散するだろう。そしたらアタイたちの町は終わりだよ」
「え?」
「花粉が飛散したここら辺一帯は、あの大樹の様な化け物で一杯になるだろうからな」
「だからその前に私たちがそれを阻止しないといけないの」
リースは、戦闘に向いてない。
それは、この前の勇者の試験の時、理解した。
でも、それで臆病者と決めつけるのは間違いだろう。
なぜならこんなに強い決意の目をしているのだから……。




