#時間帯
#時間帯
「結局一匹しか釣れなかったね……」
リースが残念そうな顔する後ろで、夕日が沈もうとしていた。
「何がいけないんだろう?」
俺も頭を抱えたが、その理由は分からない。
「もしかしたら餌がいけないのかもな……」
それにフニャールが結論を導き出そうとする。
「いや、餌は、みんな同じだ。ならやり方か、後変えられるのは時間だな……」
「時間?」
「ああ、もしかしたら夜の方がタイガーフィッシュは活発になるのかも……?」
「確かに……試してみる価値はあるわね?」
リースが賛同する。
「なら日が沈んで少ししたらまた来てみるか?」
その案にフニャールも乗っかる。
「そうだな」
俺たちは、一度リースの屋敷に戻る事にした。
「さすがにこの時間は誰もいないわね」
それは夜中の一時。
綺麗な月が川を照らしている。
風はなく、なんとなく暖かかった。
いや、少し暑いか?
早速俺たちは、釣竿を用意する。
「ねぇ? 俊彦?」
「何? リース?」
「勇志さんとはどんな関係だったの?」
「……」
「言いたくないならいいの。でも、気になってね? だって、私は同じ勇者じゃない? だから、協力しなといけない気がするの?」
「勇志は、俺がこの世で一番妬む人間なんだ……」
「え?」
「俺の父親は、俺が小学校を卒業した日に死んだんだ。でも、それを一番に発見したのは俺じゃなかったんだ」
「ちょっと待って? 小学校って何?」
「俺の国で幼い頃に勉強するところさ」
「私の所で言う魔法学院の事かしら? それで?」
「それでそれを一番に発見した勇志は、それから俺の事を汚いモノでも見る様な目で見る様になったんだ」
「……」
「初めの頃は、その程度だった。でも、段々それが、悪口に変わって、暴力になって、エスカレートしていったんだ」
「きっと、勇志さんもそんな現場を目撃して、普段通りの振る舞いが出来ないくらい、ショックだったのよ」
「かもね……。でも、話はそれだけじゃないんだ」
「どういう事?」
「その後、同じ中学に行くと、すぐに俺と勇志の関係を修復不能にする出来事が起きたんだ……」
「俊彦!」
すると突然、フニャールが叫ぶ。
今は、深夜二時。
外は暗く、月の光が川を照らしていたが、その中で無数のタイガーフィッシュが輝いていたのだ。




