金虫のフニャール
#金虫のフニャール
とりあえず俺たちは、フニャールが絶対ランクAのクエストがいいと強情だったが、まず無理だろうという事で、ランクCのクエストを受ける事にした。
川に迷い込んだ何匹ものタイガーフィッシュを海に解放するクエストだ。
どんなクエストになるかは、まだ分からないが、そこまで危険なクエスト、戦闘なんかにはならないだろう。
「まぁ、仕方ないな……」
フニャールはしぶしぶ付いてくる。
それにしてもタイガーフィッシュとは、どんな魚だろう?
タイガーと付くくらいだから、獰猛な魚をイメージするが、リースの話によると、体に虎の様な模様がある、とても大人しい、主な食事は、プランクトンの魚らしい。
大きさは約五十センチくらいで、普段は海にいる事が多く、それがクエストの川にいると生態系が崩れるらしく、俺たちが着く頃には、すでにその川岸は、タイガーフィッシュを探す冒険者たちで一杯だった。
みんな同じクエスト狙いのようだが、このクエストは歩合で報酬が出るのだ。
「人が多いわね? それにしても何でタイガーフィッシュはこの川に迷い込んだのかしらね?」
リースが馬車の中の餌を見ながら口を開くが、なぜこんな大量の餌を用意したかと言うと、餌を使って、タイガーフィッシュを捕まえるつもりなのだ。
「飯でも探してるんだろ?」
「フニャールじゃあるまいし……」
俺は、フニャールのとんちんかんな回答にこっそり突っ込むが、フニャールは聞いていなかった。
「お、Dクラスのフニャールじゃねーか?」
そこには先ほど、俺たちに、パーティーを懇願してきたガルダーがやって来る。
「何だよ?」
フニャールは嫌そうな顔をしたが、どうやらフニャールは巷では、悪い意味で有名な様だ。
「何でお前が勇者パーティーに参加してるんだよ? 俺なら金貰ったって参加させないのに……いや、そんな金、フニャールが持ってる訳ないか? ガハハハハ!」
ガルダーの笑い方は、なんとなくだが、俺は嫌いだった。
「余計なお世話だ! こんな所で油を売ってないでさっさとどっか行きな!」
「お前に言われなくてもすぐにずらかるわ! それより勇者さん? フニャールと組むくらいなら俺と組んだ方が得だぜ? この俺の上腕二頭筋を見なよ?」
「……」
俺は、自信満々に見せられた上腕二頭筋に、全く興味がなかったが、社交辞令で会釈だけする。
「まぁ、フニャールはすぐ手柄をねこばばするから気を付けな! なぁ、金虫のフニャール? ガハハハハハ!」
「金虫?」
そう言うと、ガルダーは下流の方に向かったが、フニャールは顔が真っ赤になるくらい怒っていた。




