#49.パーティー集め
#49.パーティー集め
「あなたは……?」
突然の大男の登場にリースが瞳孔を大きくする。
「俺は、Cクラスのガルダーだ!」
だがそんな事気にもかけないガルダーは、見た目通り野太い声だが、それだけでパーティーに入れる訳には勿論いかない。
「そう言われてもな……」
俺はリースと違う意味で目を細くした。
「俺は頼りになるぜ?」
俺はやたら態度のでかいガルダーの汚い顔に、そんなに好感を持てなかったが、しかしリースはお人よしなのか、相変わらずなのか、俺の顔を悩ましい表情でのぞく。
「うーん……。でも、断る理由は無いわね……」
「そこの者たち! ちょっと待てぇい!」
リースが危うくそのガルダーの提案を了承しそうになった所を、今度は高い声が遮った。
「そいつをパーティーに入れるくらいなら俺をパーティーに入れないか?」
「あなたは……?」
「俺は、Bクラスのグールズだ」
グールズは、見るからにパワー系のガルダーと違って、スラッとした技巧派に見えたが、Bクラスという事はガルダーより上の様だ。
「はぁー……」
だが俺は、とりあえずもう少し冷静に対応したかったが、リースはそうではなかった。
さぁ、どうするべきか?
「何だお前? 俺が先に声を掛けたんだぞ? 邪魔するな?」
するとなぜかガルダーとグールズが取っ組み合いを始める。
「はぁ? 君こそ、Cクラスのくせに、でしゃばってるんじゃないか?」
「何だと! でしゃばってるのはお前だろ! BクラスもCクラスも大して変わんねーよ!」
「いや、天と地ほどの差がある!」
どちらも入れればいいじゃんと思う人もいるかもしれないが、人数が多いと役割や、分け前などで必ず揉める。
だからパーティー集めは、本当に簡単ではないのだ。
これはここに来る前にアザゼルが言っていた事なのだが、勇者パーティーは色々優遇される。
つまりこいつらは、その恩恵にあやかろうとしている、俗にいうハイエナと呼ばれる連中なのだ。
「リース行こ……」
「え? 仲間は?」
当然リースは俺の言葉の意図を瞬時に理解できなかったみたいだが、そんなリースの背中を強引に押しながら、俺たちは静かに二人を避けて、冒険者ギルドを後にした。
「どこにいるんだろうな?」
「何が?」
「頼りになる冒険者? このままじゃ俺たち、クエスト受けられないぜ?」
「うーん……。でも、さっきの二人は駄目なんでしょ……?」
「いや、駄目って訳じゃ……」
いや、勿論駄目だ。
勇者のエンブレムを見てから、目の色を変える奴ら何て全く信用できない。
きっと都合が悪くなったら面倒な事になるだろう?
「ならアザゼルに――」
ドン!
その時、リースが向こうから歩いてきた人と肩が思いっきりぶつかる。
「あっ! ごめんなさい!」
「……」
ぶつかった相手は深くフードを被っていて顔は分からないが、何も言わず俺たちと別れようとする。
が、そこで俺はソイツの右腕を思いっきりつかんだ。
「返せよ?」
「……」
「返せって? 俊彦どういう事?」
「リース、勇者のエンブレムはあるか?」
「あれれ……? ない……!」
「こいつが今、盗ったんだ!」
「……」
俺が掴んだ腕の力を入れると、ソイツの右手から勇者のエンブレムがこぼれ落ちた。




