#46.目的
#46.目的
とりあえず勇者になった者は、王国の徴集があるまで、町のクエストをこなしていればいいらしいが、そんなチュートリアルを一時間受けた後、俺たちは国王から勇者のエンブレムを貰うと、家に帰る事になった。
「色々おーたけど、世話になったわ!」
「こちらこそ」
ヒューストとは、短い付き合いだったが、それ以上の関係になれた気がする。
「結局あんさん? 一度も笑わなかったな? 今度おうた時は、ワイが死ぬほど笑わせてやるさかい覚悟しときやー?」
別れ際にそんな事を言っていたが、どうだろう?
俺にはよく分からない。
俺たちが家に着くと、リースは早速、リビングにいたフレリアに今回の事を報告した。
「お母様、ただいま戻りました!」
「お帰りなさい。リース。それで試験はどうでした?」
「無事勇者の称号を授かりました」
「そうですか。さすが我が娘。頑張りましたね。私も鼻が高いです。今日はビアンカに言って、ご馳走にしましょう」
「はい!」
リースがフレリアに強く抱きしめられるのを、俺は後ろで黙って見ていたが、もし母さんがいたら俺の事も褒めてくれただろうか?
きっと褒めてくれた。
母さんはそんな人だ。
それにしても俺は、これからどうしよう?
今の所、特に目的らしい目的も見つかっていない。
強いて言うなら母さんを探したいが、どうすればいいかも、どうしたらいいかも分からない。
なら……。
「俊彦もこっちに来なさい」
なぜかフレリアが俺の名も呼ぶ。
「え?」
「俊彦もよく頑張りましたね」
するとフレリアは俺の事も優しく抱きしめてくれたが、それは思春期の俺には、とても恥ずかしかった。
(母さん……)
だがそれは、母の香りに少し似ていた。
なら……もう少しだけここにいて、リースの手伝いをする事は駄目な事なのだろうか?




