#44.参った
#44.参った
バリバリバリバリ！
勇志のグランドセイバーが火を噴く。
でもそんな俺だって、神様を愛してるかって聞かれたら、何て答えていいか分からない。
いや、むしろ……。
「大っ嫌いだ！」
「何ッ？」
その瞬間、勇志の驚いた顔が見えた。
なぜなら俺は、勇志のグランドセイバーを受け止めるのに左腕を捨てたからだ。
俺の左腕は瞬く間に黒焦げになったが、そのまま俺は勇志の剣を残った右腕で奪う。
それは一か八か、自分の頑丈さにかけた咄嗟の判断だったが、きっと普通の人間だったなら手首から上が消し飛んでいただろう。
「だって神様は……いつだって自分を信じられる強者にしか微笑まないから！」
そして、そのまだ魔法効果の途切れていない魔法剣を勇志に向ける。
さすがの勇志も、いくらハードの魔法がダメージを軽減するとはいえ、自分の強力な魔法剣を食らったらひとたまりもないだろう。
「わ、分かった！ おお、お前たちが勇者になる事を認める！ だ、だから攻撃するな！」
「俺……の勝ち……だ」
そこで俺は力尽きる。
「俊彦！」
その場に倒れ込んだが、そこにリースが駆け寄る。
「リー……ス……」
リースは必死に回復魔法を唱えていたが、すでにその力はほぼない。
「ゴゴ、ゴミ拾いのくせに……ちち、調子に乗りやがって……！」
そんな中、勇志は怒りをあらわにした。
俺から剣を取り返すと、再び剣を振り上げる。
「な、何する気！ 私たちは勝ったのよ！」
「はぁ？ この決闘は参ったって言った方が負けなんだよ？ 俺はまだ参ったなんて言ってねー！」
「そんなのずるい！」
「ずるいだ？ そんな事はどうでもいい！ そこをどけ！」
「いいえ！ どかないわ！」
「ならお前事ぶった切るぞ！」
「……」
リースは俺を覆う様に、体を張った。
「参った……」
だが次の刹那、俺は少しでも風が吹けば消え入りそうな声で、参ったと口にしていた。
