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#4.病院
#4.病院
母さん!
死なないで!
俺は転がる様に店長の軽自動車に乗せてもらい、病院に向かった。
こんな時間もあって道路は空いていたが、もし警察に遭遇したらキップを切られるかもしれない速度だ。
ただ今は、そんな事より母さんの事で頭がいっぱいだった。
いつの間にか、雨は嵐の様である。
車は住宅街を抜け、商店街を抜け、すると遠くに大きな病院が見えてきた。
「俊彦君ッ!?」
病院に着くと、俺は店長の言葉も聞かずに車を飛び降りる。
「すみませーん! すみませーん!」
だが当然、こんな時間に正門は閉まっている。
そんな事にも頭が回らないほど、俺はパニックだったのだ。
「俊彦君! こっち!」
そう店長に言われ、俺たちは裏口に回る。
そこには夜間の受付口があった。
「どうなされましたか?」
「母さんが! 母さんが!」
「落ち着いて下さい! そのお母さんのお名前は?」
「えっ! 母さんは……」
混乱し過ぎて、すぐに母の名前が出てこない。
「風間光江です!」
そこで店長が母の名前を受付に伝える。
「ああ、先ほどの……。残念ですが……」
俺は受付のまさかの言葉に、声も出なかった。