#38.日没
#38.日没
「この鳥、もっと速く走らんのかい!」
俺たちは休憩も一切取らないで王宮へ急いだ。
さすがにぶっ通しで俺たちを乗せている鳥たちも疲れが見え始めるが、そんな事俺たちに言っている余裕はない。
太陽が少しずつ傾いて、すでに空は赤くなり始めている。
このままだと日没に間に合わないかもしれない。
「急げ! 急ぐんだ!」
だが諦める訳にもいかない。
勇者になる事は名誉な事だし、勇者になれば色々優遇される。
なぜリースが勇者になりたいかは知らないが、きっとそう言う事も関係しているのだろう。
「間に合ってくれ!」
俺たちはさらに急いだ。
「なんだ? 勇者の称号を得れるのは俺たち二人だけか?」
勇志は玉座の間で国王が来るのを待っていた。
そこには、シェリーの他に白い仮面で顔を隠してる異様な奴が一人いるが、どうやらその仮面の男も条件をクリアしてる様だ。
「だらしない連中だな? こんな試験もクリア出来ないなんて? そう思わないか、シェリー?」
「そんな事より国王ですよ……」
「はぁ?」
シェリーの言葉の後に、立派なサンタクロースの様な白いひげを生やした国王とアルベールが入ってくる。
「時間じゃな……」
国王が日没を知らせる。
そこに俺たちの姿はやはりなかった。




