#36.抜け道
#36.抜け道
「あんさん何者や……?」
俺は気が付いたら自我を取り戻していたが、そんな俺をヒューストは怪物を見る様な目で見ていた。
「よかった……無事で……」
それに対して、リースは涙ぐんでいた。
「ごめん、リース……。俺も何が何だか……」
ヒューストとリースの怪我は、リースの魔法で回復させたので、完治とまではいかないが、動く事には問題なさそうだ。
ただ、魔法が得意でないリースの魔力は、そろそろ限界だろう。
次怪我したら、応急処置も怪しい。
「分からない訳ないやろ! 古代の化け物やぞ! 一国を落とすと言われる力やぞ! またいきなり暴走せんやろうな!」
「もう大丈夫」
俺の言葉に根拠はない。
「もう?」
だって、俺も自分の体に今何が起きているか、さっぱり分からないのだから。
「でも、もしもう一度二人を危険にさらす様なことがあれば、その時は殺してくれ……」
俺が巨大化して破けた服は、リースがスキルで複製してくれた。
「殺せるか! 簡単に殺せるくらいならこんなに頭なんて抱えておらんわ! はぁー、ワイはどうしてこんな奴と組んでもーたかなー」
「……それよりもこれからどうするか考えましょう?」
するとリースは今、俺たちにある問題を提示するが、それは一つしかなかった出入口が塞がれていた事を意味していた。
「どうもこうもないわ! 誰かさんのおかげで誰かが来るまで、ワイらは一生ここから出れへんわ!」
「いや、もしかしたら、そんな事ないかも……」
それに俺は、異論を唱える。
「どういうことや?」
「さっき煙幕が風でどこかに流されるのを見た気がするんだ。つまり、そっちに風の抜け道があるかもしれない」
「ほんまか?」
「ああ」
「なら、もしかしたらどこかに外に通じてる穴があるかもしれへんな?」
ヒューストが淡い期待を抱く中、俺が案内すると、そこには高さ五メートルの所に大人一人通れそうな穴が空いていた。




