#35.懐かしいモノ
#35.懐かしいモノ
(ここは……どこだ?)
『母さん、またみんなに馬鹿にされたよ……』
(そうかこれは俺の夢だ……)
『悔しいのかい?』
(俺は夢を見てるんだ……)
『うん……。だって俺は、ただ必死に生きてるだけなのに、みんなそんな俺のすべて否定するんだもん……』
『何でだと思う?』
『俺が貧乏だから?』
『そうかもしらないね』
『それとも俺が可愛くないから?』
『そうかもしれないね』
『それとも俺が人より劣ってるから?』
『そうかもしれないね。でも、それでも笑って生きなさい。だって母さんは、俊彦の笑った顔が一番……』
『え?』
「笑ってよ……俊彦……!」
その瞬間、ようやく煙幕が晴れる。
そこには足から血を流しているリースが立っていた。
リースはけむり玉を使い、その間にヒューストを助けようとしたのだが、その時、俺の強力な一撃が地面を砕き、その爆風でリースは足を怪我したのだ。
――リィ……ス……?
俺の頭の中で何かが引っかかる。
それは懐かしいモノだった。
まるで母が初めて褒めてくれた時の様な……?
――カア……サン……。
「だって私は、俊彦の笑った顔が……!」
――オレハ……マタ……。
「一番好きだから……!」
――タイセツナモのを……。
すると俺の体は、ゆっくり人間の姿に戻っていったのだ。




