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#32.紋章

#32.紋章


「ラッキー! こんな所に二つもあるやんけ!」


さらに広げた奥には、勇者の証と呼ばれる鉱石があっさり輝いていた。

ヒューストは早速リースと分ける。


「後は帰るだけや? 勇志とかいう奴のおかげで楽勝やな?」

「ちょっと待って!」


するとリースが浮かれているヒューストを呼び止める。


「どないした?」

「ちょっと休憩しない?」

「こんな所で?」

「だって、さっきから俊彦の様子がおかしいんだもん!」

「どうせトイレにでも行きたいだけやろ? その辺で済ませや?」

「そんなんじゃないわよ! 俊彦? 大丈夫?」

「……」


俺は醜い。

自分で自分の事が嫌いになるほど。

おぞましくて、卑怯で、最低だ。

だって俺はさっき、勇志がやられそうになるのを黙って見ていた。

それで俺の最悪の人生が何か変わる訳でもないのに……。


(ザワザワザワ――)


「リース……やっぱ俺が悪いのか……?」

「き、急にどうしたの?」

「こんなんだから誰も俺を認めてくれないのか……?」


ガルルルル。


その時、洞窟のさらに奥から野太い獣のうなり声が聞こえた。


「な、なんかおるぞ!」


ヒューストが瞬時に奥の暗闇に向かって槍を構えるが、その魔物が天井の隙間から差し込む太陽の光で明らかになるとヒューストは腰を抜かす。

獅子と山羊と蛇を組み合わせた姿……。


「キマイラ!? なんで三千年前に絶滅されたとされるキマイラがこんな洞窟におるんや?」


だが、そんな事お構いなしに、顔だけで俺たちの何倍もあるキマイラはのそのそと俺との距離を詰める。


「何で俺ばっかり……」

「アホー! 何してるー! 早くに逃げんかー!」

「こんな想いをしなくちゃいけないんだ……」


俺の嘆きを無視して、キマイラは丸太の様な腕を振り下ろす――。


「俊彦! 危ない!」


それをリースは咄嗟に俺をかばって、もろに受けてしまうが、その威力はダンプカーに匹敵した。


「リース……?」


俺は言葉を失った。

なぜなら数メートル吹き飛ばされたリースの右腕が変な方向に曲がっていたからだ。

その痛みは気を抜くと意識を失うほどの激痛だろう?

でも、リースは満面の笑みを作っていた。


「と、としひこ……だい……じょうぶ……?」


(ザワザワザワ――)


その瞬間、突然俺の右手の甲に地図記号の様な黒い模様が表れ、激しく光り輝きだす。


「うわぁぁぁぁぁぁー」

「はぁ? ああ、あれは確か? ブ、ブラックドラゴンの紋章? 一万年前にこの世界に突如現れ、人類に絶望を与えたとされる古代書に出てくる最凶最悪の厄災? でも、なぜ今、そんなもんがアイツの手に?」


するとみるみるうちに俺の体はキマイラと同じくらいの大きさになり、黒い鎧の様な鱗で皮膚が覆われたのだ。

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