#28.実戦
#28.実戦
「飛び降りろ!」
ヒューストが叫ぶのと同時に、ゴブリンは火の矢を放つ。
瞬く間に馬車は燃え上がるが、俺たちは間一髪の所で外に逃げる。
すかさずゴブリンは剣を構えて、俺たちを包囲した。
俺は戸惑う余裕もなく、三体に斬撃を浴びせられたが、やはりかすり傷一つ付かない。
それどころか敵の剣の方が刃こぼれしている。
それに対してヒューストは、どこから取り出したのか槍で一体ずつ、ゴブリンを大鳥から叩き落していた。
リースは、実戦経験なんてないのだろう?
震えながらも俺たちの間で剣を握っている。
そんな俺だって、なぜかダメージを受けないとはいえ、どうしていいか分からなかった。
ヒューストがあっという間にゴブリンを五体薙ぎ払うと、勝てないと悟ったのか、ゴブリンたちはあっさり逃げていく。
俺たちはとりあえずヒューストのおかげで難を逃れたのである。
「あんたら戦った事ないんかい? これじゃあ、この先が心配やで?」
「申し訳ない……。でも、どうする……?」
俺は遠くで黒焦げになって止まっている馬車を見てから質問する。
「アレを借りるしかないな?」
するとヒューストは、俺が予想した返事をした。
武器はある。
でも、鞄を持って飛び降りたとはいえ、ほとんどの食べ物や、回復薬は馬車の中だ。
ロープやけむり玉なんて食えないから、俺たちはあまり時間を費やせなくなった。
とりあえず後戻りしている時間はない。
そこで俺たちは、ゴブリンを叩き落したことで、空になった大鳥を拝借する事にした。




