#25.単刀直入
#25.単刀直入
俺たちはまず、王都だけあって、あのファルフより賑やかな城下町に下りて、試験の準備をする事にした。
食料や、回復薬、長いロープや、もしもの時のけむり玉、地図も手に入れたが、この地図の試しの洞窟の横にある悪魔の顔の様なマークは何を意味しているのだろうか?
なんだか予想はしていたが、一癖も二癖もありそうな試験で、すでに何人かが試しの洞窟に向かったみたいだが、俺たちは夕食を頂いてから出発する事にする。
(急がば回れ……)
こういう時は、落ち着いてから行動するのが大事なのだ。
俺たちはファルフの一番の料理店より、大きな飲食店に入る。
そこには身に覚えるのある顔がいた。
「よ! 俊彦! 調子はどないや?」
手前の席にいたそいつは、まるで古くからの知り合いの様な態度をとるが、あまりのうさん臭さに、逆に俺は嫌悪感を抱かなかった。
「誰?」
リースが不思議そうな顔をする。
「パラの村で知り合ったんだ。名前は確か……ヒューストン!」
パラの村とは、ここに来る途中に寄った村である。
「ヒューストやッ! なんや、ヒューストンって! ……どこかの都市にありそうな名前やな?」
「あ、ヒューストか」
俺は思わず間違えたが、ヒューストはあまり気にしてない様だ。
「で、そちらのお嬢さんが俊彦のパートナーか?」
「リースと言います。よろしくお願いします」
「よろしゅう! それにしても偉いベッピンさんやな? 俊彦には勿体ない!」
「大きなお世話だ……」
「そんな事より俊彦?」
「何ですか? ヒューストさん?」
「何だその他人行儀は? ヒューストでいいよ! それよりこんな所で油を売ってていいのか? もうみんな試しの洞窟に向かってるぜ?」
「そう言うヒューストだって、油を売ってるじゃないか?」
「ははは。……ワイは油を買いに来たんや?」
「油を買いに?」
「ワイはここで仲間を探してたんや」
「仲間?」
「単刀直入に言う。あんたら、ワイと組まへんか?」
それは俺たちにとって、予想外の提案だった。




