#22.雨空
#22.雨空
城下町を抜けた王宮の大きな門の前の広場には、勇者候補が沢山いたが、その数は優に五十を超えていた。
その中には先ほどのヒューストもいるが、一体この後、俺たちにどんな試験が待っているのだろうか?
「私、エントリーしてくる!」
まだ説明がないが、その隙に、リースは駆け足で門の前に陣取っている受付に向かった。
「おい! アレが今回、合格間違いなしと言われている噂の選ばれし者らしいぞ!」
「マジか? やっぱ只者じゃなさそうだな?」
すると集まった候補者の連中が選ばれし者の登場に、一段とざわざわしていたが、この異世界の住人でない俺は、そこまで興味は無い。
チラ見する程度だったが、その者がなぜか足早にズカズカと俺の方に向かってきた時、俺は血の気が引く思いをした。
「何でここに! ゴミ拾いがいるんだよ!」
「え……? な、なんで……?」
俺は恐怖と驚きで、思考が停止する。
「まさか! 全てお前の仕業か!」
なぜならそれは間違いなく、俺の世界で俺を率先していじめていた同級生の雨空勇志だったからだ。
でも、なぜ勇志がこの異世界にいるのだろう?
この世界に来たのは俺だけじゃないのか?
「おい! 俺様が聞いてるんだぞ! 何とか言えよ!」
すると勇志が思いっきり俺の胸をどつく。
そのまま俺は、バランスを崩して後ろに倒れた。




