#21.無スキル
#21.無スキル
「リースのスキルってどんなの?」
俺は、馬車の中で向かいに座っているリースに尋ねる。
リースを最大限サポートするには、リースのスキルを知っておいた方がいいと思ったのだ。
リースは急に真面目な顔をする。
「私のスキルはコピー。私の質量以下の物に触れると複製できるの」
「へぇー、それなら高価な物コピーし放題だな?」
「それは無理ね」
「何で?」
「この世界には、複製した物かどうか判別する魔法もあるの。だからお金なんて複製したらすぐバレるし、私のレベルでは複製できる物質も限られてるわ?」
「ふーん」
「俊彦は?」
「え?」
「スキルよ?」
「俺は……」
俺はスキルなんて持っていない。
すでに十五歳という事で、今日までに何回か神殿を訪れたが、スキルを授ける神官にどうやっても、どうしても、スキルを授けられないと諦められたのだ。
俺はこの世界の人間じゃないからそれは当然かもしれないが、そんな人はこの世界では、稀で、無スキルと言うらしい。
「無スキルなんだ……」
「そ、それなのにあんなに強いの?」
だが、リースは逆に驚いていたが、俺は自分が強いなんて実感はない。
だって俺は、俺の世界でいつも底辺だったから……。
体育の授業のソフトボール投げですら一回も勝てた事が無い。
でももしかしたらこの異世界では、外見が悪くても無一文の俺でも、能力だけはライトノベルの様に突出しているんじゃないかと淡い期待を抱いた日もあったが、この結果である。
まぁ俺は、リースの邪魔にならない様にするだけだ。
「着いたみたいね?」
気が付くと、馬車は王宮の城下町に着いていた。




