#2.手紙
#2.手紙
「母さん――!?」
台所の真っ白なショートケーキが目に入った途端、俺の家の中ですらこんなに暑いのに、俺は全身が寒気がするほど嫌な予感がした。
今日は俺の誕生日、六月十三日だ。
だが、うちにケーキなんて買う余裕はない。
だから俺は慌てて、一つしかない寝室のふすまを開けた。
「……!?」
でもそこには誰もいない。
当然だ。
今日も母さんは、パートのはずだからだ。
俺は一瞬、父さんの事を思い出し冷や汗をかいたが、考え過ぎだと自分に言い聞かせ、鞄を置いてから台所に戻ると、机の上にはショートケーキの他に置手紙があった。
俺は慌てて手紙を手に取る。
『俊彦へ。十五歳の誕生日おめでとう。私は、今日が来るのを楽しみにしていました。私がお父さんと出逢ったのも十五の時です。お父さんは、その頃から生真面目で、正義感が強く、とても優しい人でした。そんなお父さんにどんどん俊彦が似ていくのを見ると、胸が熱くなります。今は辛い事が多くて、挫けそうなときもあるけど、二人で力を合わせて頑張っていこうね。ショートケーキはスーパーで残った物を貰った物なので、遠慮なく頂いて下さい。母より』
「なんだ……」
母さんにもしもの事を想像した俺は、急にほっとして体の力が抜ける。
突然お腹も空いたが……。
俺は昨日使って、学校で洗っておいた割りばしで、ショートケーキを真ん中から二つに分けた。