#19.出発
#19.出発
「俊彦? 用意は出来た?」
あれから一週間が経った。
その早朝。
空は雲一つない青空である。
ついに俺とリースは勇者の試験のために王都に向かうのだ。
「フレリア様から旅費も預かったし、多分大丈夫だ……」
「そう」
リースに続いて、俺も馬車に乗る。
すると馬車はみんなの見送りの中、目的地、王都グライズに向かって出発した。
「それにしても私、不安だわ?」
「何が?」
「勇者の試験を無事クリア出来るかしら?」
「……」
確かにここ最近のリースを見ていると、なぜ勇者候補に選ばれたのか、俺にも分からなかった。
剣術が得意な訳でも、魔法が得意な訳でもなさそうだ。
ただこの世界では、十五歳の時に誰でも神殿でスキルを授かるらしいのだが、そのリースのスキルも謎なので何とも言えない。
「まぁ、なるようになるさ……」
俺が適当な事を言うと、リースは頑張って笑顔を作ろうとしたが、そんな表情をされると、流石の俺も何か思う所が無い訳じゃない。
「ありがとう」
「え?」
「一緒に来てくれて……。私、俊彦がいてくれてよかった」
馬車で飛ばして、片道六時間かかるそうだが、お昼には王都に着くだろう。




