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#表彰台

#表彰台


「四回目!」

俺は、今日は、四回、リベの背中をタッチできた。

もうあれから三週間になる。

俺は、リベがタッチしようとした瞬間に、カウンターを合わせられるくらいに成長していたのだ。

薄暗い山の世界は、俺に広い視野を与えてくれた。

通り過ぎていく風の流れは、俺に呼吸を教えてくれた。

体を覆う熱は、俺に体力をつけてくれた。

まだ、一度もリベに勝った事はないが、俺は、確かに、以前の俺とは違くなっていたのだ。

「よし! 今日はここまで!」

でも、どれくらい強くなっているのだろうか?

こんなんで魔王に勝てるだろうか?

こんなんで今度こそ仲間を守れるだろうか?

なんだかまだ俺には足りないものがある気がする。

「ありがとうございました」

俺は、リベに頭を下げる。

「それでどうするんだ?」

そんな中、リベが俺の方を振り向く。

「何がですか?」

「今月のコロシアムは明日までだぞ? リベレラルに挑戦しないのか?」

「今の俺に勝てるでしょうか?」

そう、俺の肉体は強化されていても、俺の心はあの頃の、ゴミ拾いの時と変わっていないのだ。

「勝てないだろうな」

「ですよね……」

「戦わなければ……な?」

「え?」

「俊彦は、なぜ戦うんだ?」

そう言えば、俺は、なぜ戦っているのだろう?

今までいつも気が付いたら戦っていたが、一度でも俺に戦う理由なんてあっただろうか?

はっきり言えば、俺が無理する必要も、無理して出来る事もあまりなかった気がする。

なのに俺は、抗っていた……。

それは……。

「リースが……いたから?」

俺の心の中にはなぜかリースがいるのだ。

「好きなのか?」

「いや、俺は……」

俺は、自分の気持ちがよく分からなかった。

ただ好きとかそういう気持ちじゃない気がする。

ルックスも性格もお金も才能も全て持っている正反対のリースに、置いて行かれたくなかっただけだ。

置いて行かれない事で、俺は、俺を守りたかったのだ。

「なんで分からないか分からないってやつか?」

リベがふと優しい顔をする。

まるでリベにも同じ経験があったかの様に。

「はい……。分かりません」

「だから勝てないんだよ? いや、だから勝つことに執着出来ないんだ? 負けてもいいと思ってる! それじゃ駄目だ! 負ける事に意味はある。それで反省する事も後悔する事も意味がある。でも、人は勝つ事で初めて生まれ変われるんだ」

「生まれ変わる?」

「ああ。勝て! 俊彦! お前はそこからだ! 自分にじゃない! 他人にだ! 一度勝てば、お前は変われる!」

勝つとはどういう事だろう?

きっと表彰台に上がるって事だ。

誰かを押しのけて……。

でも、そう言えば、表彰台に上がった人間は、みんな輝いていた。

それを俺は、赤の他人の様に見ていたけど、本当は俺もその人たちの様に輝きたかったのだ。

もし、万が一、リベレラルに勝てたら俺は輝けるだろうか?

もしかしたら……。

そして、今日もお昼の時間になっていた。

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