#13.アザゼル
#13.アザゼル
「じぃ! じぃ!」
フレリアが執事を呼ぶ。
「何ですか? フレリア様?」
するとすぐにじぃがやって来た。
「今日からここでお世話になる俊彦さんです。色々教えて差し上げて」
「ハッ! かしこまりました!」
じぃは早速、俺に屋敷を案内する。
「おじさん? それで俺は何をすればいいんだ?」
「俊彦君と言ったね?」
「ああ」
「これから私の事は、アザゼルさんと呼びなさい?」
「はぁ……」
「それと私はリース様やフレリア様と違って、優しくないからな?」
「はい……」
「とりあえず俊彦君は文字は読めるか?」
「文字?」
そう言えば、この世界の文字はどうなっているのだろう?
言葉は通じるみたいだが、もしかして俺の世界とは違い、俺の知らない文字なのだろうか?
そしたら不便だ。
でも、そんな事まだ誰にも話したことないのに、なぜアザゼルさんは気に出来たのだろうか?
「平民で文字を読める者は少ない。もし読めないなら、今日から文字の勉強もしてもらうぞ! この家で働くからには、文字が読めないと大変だからな!」
(なるほど……)
そのまま俺は本が沢山ある部屋に案内されたが、俺は勉強は嫌いじゃなかった。
それに正式に雇われたからには、簡単には弱音は言えない。
そうこうしているうちに一日が終わる。
仕事は、部屋の掃除と、風呂の掃除と、食事の準備だったが、その他にこの世界の文字の勉強もした。
やはりこの世界の文字は、俺の知っている文字じゃなかったが、それを覚えるのはとても大変で、そんな俺に対してアザゼルさんは厳格でしかなかった。
(でも、それでよかった)
なぜなら俺みたいにねじ曲がった人間は、人に優しくされる事に慣れておらず、強く接してくれる人じゃないとその裏を疑ってしまうからだ。
しかし、何でこの屋敷にはアザゼルさんしか男がいないのだろう?
リースの父親に一度も会っていないが、一体何をしている人なのだろうか?
「今日は私と買い出しに行ってもらいます」
それからすぐに俺は、アザゼルさんと馬車で少しかかる町に出かける事になった。




