#国境
#国境
ミトさんを乗せると五分もしないうちに国境が見えてきた。
そこにはグライズ王国の兵士もいる。
「……だ、大丈夫かな?」
俺たちは、心配だった。
もしかしたらすでに指名手配されてるかもしれないからだ。
「何しに行く?」
そこにはさっきの小屋より立派な建物があり、次々とバーミリオンに向かう商人たちが検問を受けているが、すぐに俺たちの番が回ってくる。
「バーミリオンに何の用だ?」
俺は、口元をスカーフで隠しながら答える。
「ちょっと旅行に……」
「何人だ?」
「六人です」
「そうか……三千エンドだ」
検問の男がそう言うと、その後ろにいた若い男が馬車の中をチェックする。
「どうやらただの旅行客の様ですね? 特に怪しい物は無さそうです?」
「今朝報告があった第一級犯罪者と人数も違うし、問題なさそうだな……」
ざるな検問で助かった。
俺たちは、武器になりそうな物は、途中の茂みに隠してきたのだ。
俺たちが安堵した瞬間、建物から誰かが飛び出してくる。
「ルゼル隊長! 本部から昨日の犯罪者の顔写真が送られてきました!」
「何だと!」
まずい!
もしかしたらそこには俺たちの顔が載っているかもしれない。
そしたら万事休すだ。
そう思った刹那、ミトさんが馬車から顔を出す。
「おい! ルゼル! サッサと通しなさい! 私たちは急いでるんだよ!」
「何だ? ミトさんじゃないですか?」
そのミトさんの顔にルゼルの顔色が変わる。
「ルゼル隊長? 誰ですか? このおばさん?」
「馬鹿者! 我々の青春だ!」
「はぁ?」
「ミトさん? 次はいつ来るんですか?」
「三週間後かね?」
「それは楽しみですね。その時は、ぜひご馳走にならせて下さい」
どうやらそのルゼルは、ミトさんの知り合いの様だ。
「ふん! 今回は断ったくせに!」
「そんな顔しないで下さい。悲しくなります」
「まぁ、分かったわ。旦那によろしく言っておいてね?」
「はい! それでは!」
するとあっさり俺たちは国境を突破したのだ。




