#裏切り者
#裏切り者
「まさか……あのパトリオットがやられるとはな……」
国王が暗い顔になる横で、アルベールは凛とした顔をしていた。
「とりあえず今回の防衛見事じゃった。お前たちには、それ相応の報酬を与えよう」
それを聞いて、今回戦いに参加していた勇者たちの顔がほころぶが、その中には、俺たちもいた。
「だが、その前に……この中に魔の者に通じている者がいるという情報が入っておる」
「はぁ?」
「どういう事だ?」
すると玉座の間にいる勇者たちがざわつく。
「確か……俊彦と言ったな?」
「え?」
「そなた……なぜブラックドラゴンという幻の紋章がある事を予に隠してた?」
「それは――」
「いい訳はいい!」
俺が弁解しようとすると、それを国王が怒声で遮る。
「それは、予に知られると都合が悪いからじゃないのか?」
「違うわ! 俊彦はそんな人じゃない!」
「予が話してるのに口を挟むな!」
リースの叫びも、あっさり遮断される。
「それに今回の作戦は、そなたが考えたという話だが、それも我々を油断させるためのものだったんじゃないのか?」
「そ、そんなつもりは……」
「な、何言ってるんだ! おっさん! 俊彦がいなかったら今頃アタイたちは、みんなお陀仏だったかもしれないんだよ!」
「それがそもそもおかしいのだ!」
フニャールの援護射撃も国王には、届かない。
「なぜ、あんなものを食らって平気なのじゃ? なら最初からそなたが戦えば済む話だったんじゃないのか? そしたらパトリオットは死ななかったんじゃないのか? そこから導き出される結論は、お前が、魔の者と繋がっているという事だ!」
「違う! 俺は……!」
「それに俊彦殿は、決して人に懐かないムロの娘を連れているそうじゃないか? どうしてムロの娘はお前に従う?」
「ムロ! このおじさん嫌い!」
「黙れ!」
「……」
そんな中、アリサは黙っている。
「なら一つ聞く? 俊彦殿は、どこの生まれじゃ?」
「生まれ……? そ、それは……」
「やはり答えられぬか? それもそのはず、俊彦殿はこの人間界の人間じゃないそうだからな?」
「ま、まさか」
リースも驚いた顔をする。
「マジかよ?」
「それが本当なら大問題だな?」
「まさか俺たちの中に、裏切り者がいるとはな?」
「道理で今回は、魔物があんなにいた訳だ?」
他の者も冷たい視線を俺に向け始める。
やはりこの世界はクソだ。
必死に戦った仲間さえ、あっさり疑い、切り捨てるのだから。
でも、俺だって、ただ集まっただけの連中を信用してる訳じゃない。
きっと、この流れなら俺も同じ態度を取っただろう。
「どうします?」
アルベールが国王に伺う。
「そいつらを第一級反逆罪で、連れていけ!」
そして、俺たちは、国王の一言で、王宮の暗い地下の冷たい牢獄にぶち込まれたのだ。




