#11.実感
#11.実感
俺が鏡を見ると、そこにはスラッとしたイケメンが立っていた。
ビシッとした服に、ブラシでとかした髪、ツヤツヤな肌。
本当に俺だろうか?
馬子にも衣裳だな……。
「俊彦!」
俺がそんな事を思っていると、リースが軽やかにやって来る。
次に案内された場所は、食事をするところみたいで、何十メートルもある細長いテーブルに、次々と料理が運ばれている。
「似合ってますよ」
リースは俺の姿を見るなり、満足そうな顔をしたが、それはあまり褒められたことのない俺にとって、なんだかむずがゆい。
グギュルルル。
だがお腹は正直で、夕食の時間を教えてくれた。
やはりここは天国ではない様だ……。
「お腹空きましたね? 食事にしましょうか?」
リースに手招きされて隣の席に座ると、目の前には見た事のないご馳走が並ぶ。
「母さん……」
それはやはりこの世の出来事とは思えなかったが、俺は一生懸命ステーキの様な肉にナイフとフォークを使う。
その柔らかさは、刺身の様で、一緒に舌まで飲み込みそうだ……とはならなかった……。
「美味し?」
リースがトマトケチャップの様なソースのかかったサラダを取り分ける。
「ああ……」
それに俺は、何も感じなかった。
次の日。
俺は俺の家よりでかい客室で目が覚めた。
昨日はとても広い部屋にあまり寝れなかったのだが、どうやら俺は生きてる様だ。
なぜなら腹も減るし、汚れるし、痛みもある。
という事はここは、俺の世界で言う異世界なのかもしれない。
なぜこんな世界にいるのかは分からなかったが、ここでは俺の知っている常識は通用しなそうだ。
俺は、四人寝れそうなベッドから起き上がると、すぐに昨日借りたタキシードに着替えた。
コンコン。
ちょうどドアをノックする音がする。
「お目覚めですか?」
それは真っ白いブラウスでおめかししたリースだった。




